このページをdel.icio.usに追加 このページをはてなブックマークに追加このページを含むはてなブックマーク このページをlivedoor クリップに追加このページを含むlivedoor クリップ このページをYahoo!ブックマークに追加

コミックマーケット81頒布小冊子 のプレビュー

警告: あなたはこのページの古い版を編集しています。もしこの文章を保存すると、この版以降に追加された全ての変更が無効になってしまいます。


以下のプレビューを確認して、よければページ下部のボタンで更新してください。

追加TIPS

2012年12月31日に開催された、コミックマーケット81で頒布された小冊子の抜粋です。
改行・誤字・頁など原文なるべくそのままにしました。
(今回の小冊子では「!」、「?」、それらの直後のスペース、地の文の文頭スペースがいずれも半角になっています。地の文の文頭スペースのみ、wikiのルール上全角スペースで記載しています。)
また一部【】内で捕捉説明をしています。


天使17歳
東シ-44a
07th Expansion


【イベント用サークルカット】
【背景は戦人】
【「マス」は記号で表記されている】

44天使17歳
うみねこのなく頃に





お兄ちゃん
総受け新刊ありマス。

午前11時。
有明国際展示場、
東5ホール、東シ-44-a「天使17歳」


「こちらは最後尾ではありませーん!! 最後尾は現在、東1ホール
脇になっておりまーす!!」
「すみませーん! “天使17歳”のスペースはここですかぁ?!」
「あ、すみません。列は外になってるんですよ~。回ってもらえま
すかぁ? すいませーん!!」
「準備会なんですけどー! 取り置きお願いできますかー! 新刊の
戦人総受け本を20冊でー!!」



「寿先生ぇ、スケブお願いしまーす!! きゃーッ、リーア先生もいるー!!
 握手してくださいー!! きゃーきゃーッ!!!」


午後7時
東京ベイ有明ワシントンホテル。スイートルーム。

「「乾杯っ。」」

 チン。軽やかなグラスの音が響き渡った。
「きっかり正午に完売っ。見事な戦果だわ。今日の持ち込みは
何部だっけ?」
「1万部ですよ。ほっほっほっほ、まさか本当に完売できるとは。」

 縁寿とワルギリアはグラスを傾けながら、今日の戦果と美酒の
酔いを楽しんでいた。(もちろん18歳の縁寿はノンアルコールで)
 2人のサークル、「天使17歳」は、今や破竹の勢い。
うみねこBL界で知らぬ者はいない、超大手サークルだった。

 二人はタッグ結成以前にもそれぞれ個別に活動はしていたが、
それほどの評判ではなかった。
 しかし、二人の才能が融合して化学変化を起こした時。開花と
呼ぶより、爆発と呼ぶに相応しい才能が開き、瞬く間に二人を
大手サークルに押し上げたのだ。


「新刊3冊と団扇とペーパーバッグのセットが1万部完売。…まぁ、
私たちの手にかかればこんなものね……。」
「ショップでの評判も上々です。BL専門店、鯨の穴さんからも、
早くも再発注がかかっていますよ。」

「私たちならBL界で天下が取れるわ。打倒、香港アリス幻楽団!!」
「香港アリスさんはいつもすごい行列ですねぇ。あそこはどんな
本を出展しているんですか?」
「あそこはシューティングゲームよ、BLシューティング。モーホー
って聞いたことない? 主人公も各ステージのボスも、みんな
ショタばっかなのよ。」
「おやおや、それはそれは……。ぜひとも遊んでみなくてはなり
ませんね。ほっほっほっほ……。」


 そんな、ブルジョワジーな会話を交わす縁寿とワルギリアで
あった……。


「さて。一つの勝利は次なる戦いの入口でしかないわっ。今回は
お兄ちゃんの総受け本で圧勝できたけれど! 時代は常に動い
ているわ。冬コミも同じだったら読者は飽きちゃう!」
「そうですね。また新しいカップリングの境地を開きたいものです。」

「次は何にする? ぶっちゃけ、お兄ちゃんは一度離れてもいいと
思うわ。」
「ほかにも魅力的なカップリングはたくさんありますしねぇ。吟味して
みるのも良いと思います。」
「となりゃ、作戦会議だわ! 冬コミの申し込みは時間がないし!」


今でこそネット申し込みのお陰で多少、猶予は伸びたが。
かつては、夏コミ終了後、ほんの数日で冬コミの申し込み締め切り
なんてこともザラだった。

つまり、夏コミの興奮も冷めやらぬ内に、もう冬コミの本のことを
考えなければならないのだ。


「ぶっちゃけ。誰×誰?! カップリングで勝負が決まるわ!」
「私たちのモチベーションにも直結しますしねぇ。慎重に決め
たいものです。」
「適当に列挙して考えてみようじゃない。まずは王道、何かない?」
「では、王道ということで一つ、金蔵×源次では如何でしょう。」

 ワルギリアがパチリと指を弾くと、彼女らのスイートルームが
ふわりと模様替えし、金蔵の書斎に変わる。
 ベッドは天蓋付きの見事なものに変わり、その傍らに、ポン、
ポンと、金蔵と源次が姿を現す。


「……ふむ。ここは誰のゲーム盤の上やら。」
「これはお館様。……またベアトリーチェさまのゲームの始まり
でしょうか。」
「わからぬ。まぁ、どうせ我らは魔女の駒よ。私はいつものように
雷雨に向かって、ベアトリーチェ~と叫ぶ役だ。」

ワルギリアがくるりと指を回すと、二人は自分たちの意思によらず、
ベッドの脇へ移動してしまう。


「……これはどういう趣向でしょう。」
「わからぬ。……むむ、なぜに私の手がお前の肩に。」
「……私の手までお館様の肩に。」
「ぬお。喉の奥からセリフが湧き上がってくるぞ。……“源次よ、
我が友よ。”」
「私めにも、セリフが湧き上がってまいります。……“お館様……。
お慕い申し上げておりました……。”」

「“そなたが男にさえ生まれなかったら、私は妻など、娶りはしな
かったろう……。”」
「“……お館様……。……お気持ちは嬉しく思います。……
しかし私は家具に過ぎません。お館様の伴侶にはなれないの
です。”」
「“えぇい、お前はいつも自分を家具家具とっ。私の気持ちを知っ
ているくせに、いつも自分を家具などと!”……私は何を言っている
のだ、源次。」
「……わかりません。“お館様、お戯れを……”」
「“良かろう、ならばお前は家具だ。……家具なのだから、今か
ら何があっても、抵抗も口答えも許さんぞ……。”…ぬおおお、
体がぁあぁ!!」
「お、お館様ぁあぁああぁ!!」


「っと、いう感じで、どさりと二人はベッドに~!!」
「ストップ! 主従関係がそのまんまって、何てヒネリがないの?
こうじゃなきゃ萌えないわっ。はいっ、二人とも仕切り直し!」

 縁寿がパンと手を叩くと、金蔵と源次の体はぴょこりと起き
上がり、再び、スタート地点に戻る。

「いい? 基本的に主従は逆転してこそ面白いのよ。見たまん
まがそのまんまなんて、ヒネリも何にもないわけ! つまりこーで
なきゃ!」

「また体が勝手にー! “……静かであるな、源次。こうして
いると、互いに若かった頃を思い出すぞ。”」
「“……懐かしいですな。まだ、主従の関係ではなかった
頃です。”」
「ぬおお、逆らえぬー!! “…思えば、お前はいつからそのような
堅苦しい口調で話すようになったのか。……昔の口調が
懐かしいぞ。”」
「“……………………………。”」


「“源次?”」
「“………老けたじゃねーか。金ちゃん。”」
「ぬおっ、源次、その口調は懐かしい…!」
「わ、私の意思ではございません…。ど、どうしてこのようなこ
とが口から……。」
 そして源次の腕が金蔵の襟首をむんずと掴む。
そして金蔵の体をどさりとベッドの上に。
「ぬおお、源次っ、何をするかっ。」
「わっ、私の意思ではないのに、体が勝手にぃ!」
 ベッドの上の金蔵の上に、源次はがばりと覆い被さる……。

「っと!! こう来るわけよ! わかる?!」
「ま、まぁ確かにわかります。下剋上やリバースはカップリングの
基本中の基本。……しかし、その基本に飽いたからこそ、さらに
その逆になり、結局は王道に至るのではないですか?」
「2回捻って、元に戻ったらヒネリなしも同じじゃない!」


「……まぁまぁ。この議論はこのくらいにして。他のカップリングも
探してみましょう。」
「それもそうね。金蔵と源次なんて、レアすぎる需要だわ。そも
そも私、年寄りなんて描きたくないし。」
「では、郷田×嘉音とか如何でしょう。」
 ワルギリアがぱちりと指を鳴らすと、金蔵と源次は蝶の群れに
なって消え去り、変わって今度は郷田と嘉音が姿を現す。
「もちろん、嘉音が攻めよね?」
「となるところを捻って郷田攻めで。郷田のマッシヴな肉体が
嘉音の白く細い体に覆い被さり……。」


「こ、これはどうしたことでしょう?! わ、私の体が、ほ、火照るぅう
うぅ!!」
「なッ、なんでこんなところで急に脱ぎ出すんですか…?!」
 郷田の肉体が唐突に火照り出す。その熱さに耐え兼ね、ビルド
アップされた肉体を嘉音の前に晒す。


「……くッ、……見せつけているつもりですか……。」
 嘉音の顔がくしゃりと歪み、そっぽを向く。
 無理もない。シャツまで脱ぎ捨てた郷田が晒すその胸元は、
嘉音が憧れて止まないものなのだから。
「……な、何だ? 勝手に口が動く……?! “郷田さん…。……
いつ見ても、……本当に羨ましい肉体です。”」
「嘉音さん? 急に何を?! ……あぁッ? 私の口も勝手に!! “ふふ
ふ。男はこうでなくてはいけません。そんな細い体では、いざと
いう時、身を守ることも出来ませんよ。”」
「ちょ、ちょっと……、な、何を……。」
「……い、いや、私の腕が勝手に……。」
「は、離して下さい……。……ぐっ………。」
「“ふっふっふ……。華奢な体ですねぇ。……鍛えておかな
いから、自分の身一つ守れないのですよ……。”」
「よ、余計なお世話だッ。は、離せ……!!」
「だから私の意思ではないというのです…! …ああぁ、腕が勝手
にぃ!!」
「やめろッ、離せッ、離せ……、く、……ぐっ!」
「“それで精一杯ですか…? 本当に嘉音さんは可愛い方だ。
……体を鍛えなかったことを、身をもって後悔させてあげましょう
……。”って、う、うわぁああぁああ!!」
「ご、郷田さ、……やッ、やめろぉおおおおぉおお…!!」


「とまぁ、こんな感じなのですよ、ほっほっほっほ。」
「ヒネリなくてつまんないわよ。むしろ逆でしょ。案外ヘタレな
郷田が、赤目嘉音くんにいいように甚振られちゃうからイイん
じゃない!」

 縁寿が手をパンと叩くと、嘉音の瞳が赤く光る。
 そしてその細い腕で、ぎりりと郷田の腕をねじ上げると、逆に
ベッドの上に組み伏せてしまう。

「痛たたたたた、痛い痛いッ。痛いですよ嘉音さん…!!」
「“情けない声出すなよ。いい年した大人がさ。……くっくっ
くっく。”」
「は、はぁ?! 嘉音さん? 嘉音さぁん!!」
「“何だよ、でかい図体して、女みたいな声で。……情けない
ヤツ。ちょっとなぞるだけで、こうだ……。”」
「“ふ、ふあぁああぁぁぁ……!!” か、嘉音さん、くすぐった痛い、
あひひひぃい!!」


「これでこそ嘉音×郷田よね。わかる?! ワルギリアはとにかく、
ヒネリが一つ足りないのよ。まぁ、それでなくとも私、おっさん
なんか書きたくないけど。」
「……私はガチムチが受けなのは感心しません。線の細い子
が受けなのはわかりますが……。」

「だからこそ、それを引っ繰り返すのが王道じゃない。カップリン
グの基本は、見掛けの逆なのよ!」
「その下剋上理論に基づくと、戦人×留弗夫になりますね?」
「あー、そこは違うのよ。基本、お兄ちゃんは総受け。留弗夫は
どー見ても攻めオンリーでしょ。」
「まぁ確かに。基本的に戦人くんは誰が相手でも受け専です
ものねぇ。仮にウィルと戦人であっても、戦人くんが受けです
ものねぇ。」

「ウィ、ウィル×戦人?! またそれは、……面白いカップリングね。」
「ほっほほほほ。男が二人、揃いさえすれば。直ちにカップリング
を生み出してしまえるのが私たちの真骨頂ですよ。」

 ワルギリアが指を鳴らすと、嘉音と郷田は消え、代わりに、
ベッドの上で重なるウィルと戦人になる。


「どわッ?! 何だ、ここは?! これは一体、どういう状況なんだ?!」
「痛ェ。暴れんじゃねェ。」
「ウィルじゃねぇか…! 俺とお前が同じ舞台の上ってのは、珍しい
シナリオだぜ?」
「……俺はそれより、ここがベッドの上で、どうしてお前の上に
覆い被さる形で呼び出されたのかの方が気にならァ。」
「よくわからねぇが、……邪悪な魔女の気配がぷんぷんするぜ。
俺たちは一体、どこの魔女に呼び出されたんだ…?」

「をっほほほほほ。薔薇の魔女の宴にようこそ、お二人…!
さぁ、耽美なる世界を奏でなさい…!!」

「痛てて、痛ぇよウィル…! ちょっと俺の上からどいてくれ…!」
「“どいてくれ…? ……俺の犬のくせに、主人にどけと命令
するのか…?”」
「はぁ?! お前、何、言ってんだ?」
「…俺にもわからねェ。“お前は俺の犬だ。……犬に許される
のは鳴くことだけ。…聞かせろよ。今日もいい鳴き声を……。”」

「やッ、やめろウィルッ、ぃやめろぉおおおおおおおおおぉおおお!!!」


「ふつーに考えると、ヘタレなお兄ちゃんが逆転して攻めも
ありかな…ってなるのよね。ウィルみたいなパーフェクトイケメン
が、実は好き放題されてる猫だったなんて、意外性ありまく
りだもん。でも駄目なのよ! お兄ちゃんには総受け属性がある
から、相手が誰であっても受けなのよ。これ大事よ。テストに
出るから。」
「さらに言うと、ウィル×理御ですでにカップリングが出来上が
ってますからねぇ。ウィルは他のキャラとは、原則、絡みませんし。」

 ワルギリアが指を鳴らすと、戦人は蝶の群れになって姿を消す。

 しかしウィルの姿はそのままだ。
何もないベッドに向かって四つん這いになっているその格好の
ままでだ。

「戦人…? どこへ行った…? ちっ、今度はどういう余興だ……。」


 すると今度は、戦人と入れ替わるかのように、そこに再び蝶の
群れが集まり、今度は理御の姿を形作る。
「……り、理御?!」
「ウィ、……ウィル? ……ここは、一体……。」
「んッ、……体が、……勝手に………。」
「ウィル? どうしたんです?! ちょ、ちょっと、な、何を……?!」
 ウィルの指が、……ゆっくりと理御のボタンを外し始める。
 赤面しながら抗おうとする理御の両腕を、ウィルの腕がベッド
に押さえ付ける。

「“……いいだろ。”」
「え? な、何がですか……。」
「“お前の性別。……今日こそ、教えてもらうぞ。”」
「ちょ、ちょっと…?! や、やめて下さい、ウィル…! 悪ふざけは、お、
起こりますよ?!」
「“暴れんなよ……。どうせ俺には逆らえないんだから……。”」


 パンと、縁寿が手を叩くと二人の体がびくっと停止する。

「やめてよ、駄目よ駄目よ! 理御が攻めに決まってるじゃない! あ
んた本当に世間をリサーチしてんの?! はい、攻守逆転で再開!」
 縁寿がもう一度手を叩くと、理御がウィルの腕を払いのける。

「だ、大丈夫か、理御。」
「………“よくも好き放題にしてくれたものですね。”」
「理御……?」
「わ、私の意思じゃありません…! 口が、……体が勝手に…!」
 理御はウィルをごろりとひっくり返す。
すると……、その尻に指を伸ばし……。
 ぐい、ぐりりりり……。
「いッ、痛ぇえ!! や、やめろ、痛ててててッ!!」
「“何を暴れてるんです…? ……もっと力を抜いてください。…
…本当は、お餅みたいに柔らかいお尻をしているくせに……。”」
「馬鹿なこと言ってんじゃねェ…!! く、くそ、体が言うことを聞かねェ!」
「“抵抗しないで。……私の指で、……天国に連れて行って
あげますから。”」


「ふ、……ふふふふふふ。どう? これでこそ理御×ウィルよ…!
私こそがジャスティス!!」

 一筋の鼻血を垂らしながら、薔薇の魔女はニヤリと笑う。
 しかしワルギリアは腕組みをして反論する。

「しかしながら、理御×ウィルはむしろ王道過ぎてマンネリでは?
ここは年長者であるウィルがリードするからこそ面白いのですっ。」

「……ワルギリアって、おっさん絡ますの好きでしょ。さっきから
ことごとくカップリングにおっさんが混じってる気がするわ。」
「良いではありませんかっ。人生の表も裏も知り尽くした深み
ある中年男の、少しだらしない体が最高に旬な霜降りお肉で
はありませんかっ。私に言わせれば、ウィル×理御でもまだ甘
いです。そこに秀吉が乱入してNTRてしまうくらいじゃなきゃ、
全然キません!!」

「ひ、秀吉伯父さんが…? ウィルの目の前で理御を…?!」


 バーンと扉が威勢よく開き、な、何と、パンツ一丁の秀吉が
乱入してくる!

「“楽しそうやないか。二人のいやらしい吐息が、廊下にまで
聞こえてくるでぇ!”」
「ひッ、秀吉叔父さん?! こ、これはその…!! というか、その格好
は一体?!」
「わ、わしの体が勝手に動くんやー! 勘忍やー、助けてやー!!
ぐっひっひ! 女みたいな体しよってからにぃ。女でも女でなくて
もどっちでもええんや。わしがちょいと今から味見したるからな~。
……ぎゃーッ、堪忍やー、堪忍やー!!」
「わ、私だって秀吉叔父さんに興味はありません! あッ、ひ、
秀吉叔父さんんんんぁああぁあ!!」
「り、理御…!! ち、畜生、体が動かねェ…! 一体、黒幕は誰だ?!
どこの性悪魔女だ?! ベルンカステルだって、ここまで趣味は
悪くねェ!!」

「ほっほっほ。この薔薇の魔女たちに気に入られたのが運の
尽きですよ。……大人しく私たちにシチュエーションを提供し、
冬コミの新刊の贄となるが良いでしょう。」
「ストップ。私的には理御受けはないわ。どうせ受けるなら、
ウィル総受けよね。」


 縁寿が手を叩くと、秀吉は理御をほっぽりだし、その下に組
み伏せられていたウィルに襲い掛かる…!

「“と見せ掛けて。……わしの狙いは最初からお前じゃあ
あぁああい!!” 堪忍してやーッ、わしはこんなキャラじゃない
んやー!!」
「“ひ、秀吉叔父さん…!! わ、私はどうなってもいいですから、
ウィ、ウィルだけは許して……!!”」
「う、うおああぁあああぁあああ……!! 猫の群に食い千切られた
方がマシだぁああぁ!!」

「理御×ウィルであるところなのに、秀吉×理御になるからこそ、
下剋上理論が成立するのではありませんか?!」
「あ、うーん、なるほど、そういう考え方もあるわねぇ……。でも
駄目よ、譲らない! ウィルは総受けなのよ、譲れない!」
「なのに、理御が汚らわしい中年にあーだこーだされちゃって!
総受けウィルが攻めに開眼したらヒネリもあって素敵じゃない
ですか!」


「で、ウィルが秀吉やっつけて理御を取り返して、ウィル×理御
になるの? それじゃまた、2回捻って、ヒネリ無しに戻ってきた
だけじゃない!」
「いえいえむしろですね、秀吉がウィルを返り討ちにして二人
とも食ってしまうとか! 攻めは汚ければ汚いほどいいんです!
それでこそ、受けの美しさと儚さが引き立つんです! あぁ、た
ぎってきましたよ、テンションが、そしてネームが!! さっそくプロット
を描いてしまいましょう、さらさらさら!」

「……さ、さすがはワルギリアだわ。恐ろしいことを平気で言い
出す、ネームにするっ。そこに痺れる、憧れるわ……。でも私、
悪いけど、秀吉のお尻にペン入れなんかしたくないわよ!!」
「本当に縁寿さんはわかっていませんね…! 美しい白い薔薇
に、醜い肉塊が覆い被さるから美しいというのに!!」
「醜い肉塊は、どこから書いても醜い肉塊でしょーが!!」
「でも、戦人くんが秀吉に襲われたら素敵でしょう?!」
「んッ、…………んー、ど、どうかしら。……ちょ、ちょっと私の貧
相な想像力では脳内再現できないわ……。」
「ほっほっほ。ではもう一度、ゲーム盤で再現してみましょう!」

 パチン!


「“戦人くん、大人しゅーしててなぁ? すぐ終わるさかいな、
堪忍な堪忍な……!”」
「ぎゃわーー!!! 助けてくれぇええぇえ!! こんな魔女のゲームは
嫌だぁああ、いっそ殺してくれぇええ!!」
「わしかて嫌やー!! 誰かわしらを殺してぇなぁあああぁ!!」

「うぇー、ゲホンゲホン!! ないわ、ないないッ、絶対ない! いくら
お兄ちゃん総受けでも秀吉×戦人とかありえない!」
「じゃあ逆ですか? “秀吉伯父さんさ。……いい歳して、息子
より年下の甥に、好き放題されちゃうのって、……どー思いま
す…?” 、とか。」

「黒戦人…! ま、まぁ確かに悪くないわよね…。黒白戦人なんて
確かに魅力的だわ。黒戦人が、………。」
 ワルギリアがパチンと指を弾き、縁寿の妄想を具現化する…。
ベッドの上に、二人の戦人が姿を現す。
 組み伏せられている戦人は誰もがよく知る戦人。
 組み伏せている戦人は、何だか雰囲気がニヒルでワイルドだ。


「“……戦人、お前の本当の心を解放してやるよ……。”」
「な、なんなんだッ、身体が思うように動かねぇ…!」
「“くっくっくっく……、本当のお前の心がわかるのは、同じ戦人
である俺だけなんだぜ……。”」
「ふ、ふざけるなッ、う、うぉおおぉ!!」
「“素直になって、……力を緩めろよ……、よしよし、そうだ……、
いい子だ………。”」
「や、やめろぉおおぉ、そ、それ以上……、ぉッ、おああぁあぁッ!!」
「“うるさい口だな……、俺が塞いでやるよ……。”」
「さッ、さっきから何なんだ、これはッー?! ヒィィイ!! 助けてくれー!
 おかーさーん!!」

「攻め戦人も素敵じゃないですか! 醜い肉塊の秀吉を組み伏
せる黒き戦人……。どうです? 戦人くんの攻めもなかなかでし
ょう?」
「……む、むむ、確かにそれもまぁアリね……。じゃないわよッ!!
というかワルギリア、いい加減、秀吉から離れてよ! 私におっさん
を描かせようとするの止めて!!」
「BLがカレーライスなら中年男はそのルーです!! 中年がいる
からこそ、お米の白さと若々しさが引き立つのです!」
「せいぜい付け合せのらっきょう程度でしょーが!!」


「な、なら縁寿さんにも譲歩して、若返り化というのは如何です?
蔵臼や留弗夫、秀吉たちの若い頃を舞台にしては……。」
「んー、どうかしら……。何だか箸が進まないわ。」
「若返ってるのですから、これならあなたも描けるでしょう?」
「でも、正体はおっさんでしょ?! ないわ、ってゆーか、中年男に魅力
を感じないの!」
「どうしてあなたはこの世の理を理解できないのですか!! 御覧
なさい、そして理解なさい! 若返った中年男たちのハーモニーを!!」
 パチリ!
「“留弗夫。……お前には少々、兄に対する敬意が欠けている
ようだ……。”」
「“こ、これは何の真似だよ、兄貴…! や、やめろ……!!!”」
「若ロノウェとか若金蔵も素敵ですよ?!」
「んー、どうかしら……。若くても私、そもそもヒゲが駄目。というか、
若かろうと若くなかろうと、いい加減、おっさんかせ離れてよ!」
「縁寿さんは熟成した男の良さをわかっていません!! この深み
ある男の世界をどうしてわからないのです?!」
 パチリ!
「“ぷっくっく。金蔵さま。こう見えても私、……あなたを好きに
なるのに、性別など気にしない男でございますよ……?”」
「“どうせクソッタレな人生さ。…狂い合おうぜ、……一緒に。”」


「あとは、そうですねぇ。98年組ということで、小此木×天草なんて
いかがです?!」
 パチリ!
「“天草、お前まだあの女のこと引き摺ってやがんのか?”」
「“昔の話は嫌いだって言ったはずですぜ、小此木の旦那。”」
「“…そうだったな、まぁ昔のことは俺が忘れさせてやるよ。拒否は
させねぇぜ? 社長命令だ……。”」
「“へッ、……クール…。”」
「ストップストップ!!! 需要はわかるけど、98年組でBL描けるほど
私は餓えちゃいないわッ!!」
「ならば、八城十八は如何です? もちろん郁子じゃない方ですよ!」
「一体、誰と絡ます気よ。相手が思い付かないわ。ってゆーか、
だからおっさんから離れてちょうだい!!」
「十八も黒戦人なんかに攻められちゃったら素敵ですよ?! どう
して縁寿さんはこの世界を理解できないのですか!!」
 パチリ!
「“いつまで俺を否定し続けるつもりなんだよ……。わかってる
だろ…? 俺はお前で、お前は、俺だ。……お前が何を望ん
でいるかも全て知っているし、……それを与えてやれるのも、…
…世界で、俺一人だけなんだぜ……。”」
「“やめろ……、やめてくれ戦人……。私は戦人じゃない
……、十八なんだ……。やめろ、……やめろぉおおお!! わッ、
私の中にッ、は、入って、……うぐぅッ、あッ!!”」


P:125.197.216.32 TIME:"2012-01-02 (月) 23:49:38" REFERER:"http://umineco.info/" USER_AGENT:""