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el Dorado頒布小冊子 の変更点


[[追加TIPS]]

2010年5月2日に開催された、うみねこのなく頃に 右代宮家中心オンリー同人誌即売会「el Dorado-エル・ドラード-」で頒布された小冊子の抜粋です。
改行・誤字・頁など原文なるべくそのままにしました。
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うみねこのなく頃に
朱志香の母の日プレゼント
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さく・え
 07th Expansion

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「僕たちは寛大だからね!」
「召喚の魔法陣が多少、違ってたって、そんなのは気にしないわ!」~
&size(20){''「「だって、愛の力は偉大だもの!」」''};~
「う、うわ…。本当に召喚できたぜ…。祖父さまの魔導書って、ホンモノだったんだ…。」~
 自分で召喚しておきながら、本当にうまく行くとは思わなくて、朱志香はしばし、
呆然としてしまいました。~
「母の日のプレゼントを出してほしい?」
「あぁ、母への強い愛を感じるわ! ねぇ、ゼパル! この可愛いお嬢さんの願いを叶え
てあげたいわ!」

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「そうだね、フルフル! 彼女は日頃から恋愛も頑張ってるしね!」
「えぇ、そうよ。だって、使用人との禁じられた恋の成就だもの。母の日のプレゼント
で、母親の心をキャッチしておくのだって、立派な恋の大戦略だわ!」~
「い、いや別に、そんな深く考えたつもりはその……。」~
 まさか、こんな賑やかな悪魔たちが現れるとは想像もしませんでした。~
 朱志香は、母の日のプレゼントに悩んでいただけなのです。
 アイデアを求め、書庫の本を適当に漁っていたら、金蔵の魔導書を見つけ、面白
がって読んでるうちに、悪魔に願いを叶えてもらう方法、みたいなものを見つけ
たのです。~
 おふざけ半分でやって、召喚できてしまうのだから、朱志香にも金蔵のの血がしっ
 おふざけ半分でやって、召喚できてしまうのだから、朱志香にも金蔵の血がしっ
かり流れているのは間違いないでしょう…。

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「ねぇ、ゼパル。何か母の日に相応しい、魔法のアイテムはないかしら?」
「僕たちは恋愛専門! 親子の恋は少し専門外だけれどね。呼ばれた以上、何も授け
ないわけにはいかないね!」
「えぇ、そうよ! 嘉音くんとの恋の一番の障壁を取り除ける、素敵な魔法のアイテム
を授けるべきだわ!」~
「あ、いやその、ゴメンっ、普通のでいいです。おかしな魔法のアイテムとかいらない
んで…。」~
「そうはいかないね! だって僕たちは72柱の大悪魔!」
「呼ばれて、ただのカーネーションをプレゼント! ってわけにはいかないもの。」
「いやいや、ただのカーネーションでいいです、いいです…。」~
話が無駄に大きくなりそうなので、せっかく大悪魔を召喚しておきながら、朱志香
はただのカーネーションでいいと悪魔たちをなだめました。

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「じゃあ、大魔法じゃなくて、小魔法のカーネーションならどうかしら。」
「あぁ、そう言えば、そんな魔法のカーネーションがあったね! 確か、一日経ったら
枯れてしまうけど、その一日の間、贈った相手にご利益を与えるという!」~
「あ、……それならいいかな。一日程度の魔法なら大騒ぎにはならなそうだし、別
に呪ったりとか、そういうわけじゃないんでしょ…?」~
「感謝の魔法だもの。呪いとか、ネガティブな力なんてないわ。」
「ただ困ったことに、どんなご利益があるのか忘れてしまったんだ。」~
「でも約束するわ。絶対に、贈られて迷惑するような魔法ではないわ。」
「贈られた母親は、一日だけ少し、魔法の加護が受けられるカーネーションさ。それ
なら、僕たちも悪魔らしい魔力ある授け物が出来て満足だし、君だって、そう怖が
らずに受け取れるアイテムだと思うけどね!」

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 魔法のカーネーション……。
 何の効果かよく分からないけれど、魔法の力で、加護を与えてくれる……。~
 朱志香は、そのカーネーションを夏妃に贈ることに決めました。
~
「母さん、これ……。母の日のプレゼントに……。」
「おや、カーネーションですか。……どこか不思議なカーネーションですね? ひょ
っとして珍しかったり、高かったりするのではありませんか?」
「い、いや、まぁその! 何か、縁起物らしくて、持ってるとその、幸運があるらしい
ぜ?」
「そうですか。ありがとう。大切にします。」~
 ゼパルとフルフルの話によると、プレゼントした次の日、朝から晩まで効果を発
揮するということでした。~
 どんな魔法の効果があるのやら。
 ちょっと気になりましたが、明日は月曜日。学校の日。
 帰宅したら、何かいいことがあったか聞いてみることにしました。

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&size(18){ 翌日。新島の学校にて。};~
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「ジェシー、おはよー! ……どしたの?」
「ううううう…。サクかぁ、おはようだぜ……。朝っぱらから頭が痛ぇんだぜ…。」
「やっだー、ジェシ、二日酔いぃ?! キャッハハハハ!」
「うううぅ、黄色い笑いが頭に響くぜ……。」
「ジェシのお母さんって頭痛持ちなんでしょ。遺伝かねぇ。お母さんに頭痛薬とか相
談してみたら?」~
 ん? 朱志香はふと、今朝の朝食の時のことを思い出します。~
 今朝、夏妃はとても明るい笑顔をしていたのです。~
「どうしたね。夏妃。今朝はとてもご機嫌のようだ。」
「えぇ。気候が穏やかになってきたせいでしょうか。今朝は頭痛も穏やかで、とても
快適に目覚めたもので。」~
 そんな両親のやりとりを見て、あぁきっと、魔法のカーネーションのご利益だな、
なんて思ったりしたのでした……。

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 そうか、そういうことか……。
朱志香は、魔法のカーネーションのご利益を理解します。~
 確かに、あのカーネーションは、贈った相手に加護を与えると約束はしてくれました。
 でも、“贈り元の人”に、加護や呪いがあるともないとも、言ってはいません。~
 ……なるほどな。悪魔のプレゼントだもんな。タダでうまい話があるわけもないや。~
 あのカーネーションの魔法は、多分、身代わりみたいなものだろう。~
 母さんの頭痛が取り除かれて、私に移ってる。
 今日、母さんは頭痛から解放される代わりに、私は一日、頭痛に悩まされるというわ
けだ……。~
 最初は、何て迷惑な魔法だろうと思いました。
 でも、途中で考えを改めました。~
 確かに自分は頭痛で辛いですが、そのお陰で夏妃は、今日一日を快適に過ごせるの
です。~
「……ま、タダでうまい話があるわけもない。この頭痛を、母さんへの親孝行だって、
今日一日がんばろう。」~
 朱志香は何とか一日、がんばろうと決心しました。

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&size(18){「何ですってー!! ギャーギャー!!」};
&size(18){「何言ってんだよ! ギャーギャー!!」};~
「ジェ、ジェシー! 喧嘩だよー! 生徒会長なんだから仲裁して~!」~
 学校では朱志香は人気者。喧嘩があると仲裁を任されることも多いです。~
 でも、今日はどういうわけか、あちこちで喧嘩が多発し、その度に朱志香は呼ばれ
て大忙しです。~
 ところが、朱志香はそれにも思い当たるところがありました。~
 ……そう言えば母さん、言ってたな。
 使用人同士の間にいざこざがあって、よく喧嘩になって、仲裁するはめになるって。~
 きっとそれも私が肩代わりしてるんだろうな…。
 きっと今日の六軒島は、使用人のみんなも穏やかで喧嘩なんかないに違いない。~
 朱志香の想像は当たっていました。
 その頃、六軒島の夏妃は、今日は何のトラブルもないと、にこやかにしていました。

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「だから野球部ばかりズルイって言ってんでしょー! ギャーギャー!!」
「それを言ったら、サッカー部だってどうなんだよ! ギャーギャー!!」~
「だから生徒会費がギャーギャー!!」
「会計が合わなくてギャーギャー!!」~
「えー、来週出てくれるって言ったじゃーん!!」
「ごめん、その日、バイトでどうしてもダメで…。」
~
今日に限ってトラブルのてんこ盛りです。
 対人トラブルに、お金のトラブル。さらにはシフトのトラブル。~
 間違いありません。普段から夏妃が抱えてる悩みが全て、朱志香に降りかかって
いるのです。~
 ここまで色々と立て続けに起こると、朱志香は、母親がどんな星の下に生まれ
たのか、気の毒に思わずにはいられませんでした。~
 でも、それを肩代わりすることで、今日一日だけは、夏妃は楽に過ごせるのです。~
 そんな母の日のプレゼントも、悪くないな……。
 朱志香はそう思い、母に降りかかるはずだったトラブルに、頭痛を堪えながら、
次々、挑んでいくのでした。

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 六軒島、屋敷。夕食の時。
 夏妃の顔は晴れ晴れとしていました。
~
「ど、どう、母さん。今日一日、何か素敵なことはあった?」
「えぇ。今日はどいうわけか、とても巡り合わせの良い日で。とても静かで穏やか
な、素敵な一日でしたよ。これも朱志香がプレゼントしてくれた、幸運のカーネーシ
ョンのお陰でしょうね。本当にありがとう。」~
 今日一日、朱志香は踏んだり蹴ったりでしたが、母親のその笑顔で、全ては報わ
れた気がしました。~
 もうじき、24時。
 ゼパルとフルフルの、カーネーションの魔法はおしまいです。~
 24時になると同時に、朱志香の頭の頭痛が、すぅっと消えました。
 カーネーションの魔法が切れたのです。~
 ようやく気分がすっきりとしましたが、今頃、夏妃は、またの頭痛に悩まされてい
るはずで、ちょっぴり複雑な気分でした。~
 ……母の日に限らず。
 あの魔法のカーネーションで、たまには頭痛とか色々を、肩代わりしてあげるの
が親孝行かな…。

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「やぁ、朱志香! これでカーネーションの魔法はおしまいだけど、満足してもらえ
たかい?」
「夏妃は今日一日、加護の力を得られたはずだわ。」
「そうそう! カーネーションの魔法だけどね、ちゃんと説明書を調べてきたよ! 
あのカーネーションの魔法はね、」
「もう知ってるぜ。贈った私に、病気とかトラブルを身代わりにする魔法だろ? ま
ぁ、そんなうまい話があるわけないし、結果的に母さんに親孝行が出来たから、
感謝はするぜ。」~
&size(18){「「身代わり?」」};~
 ゼパルとフルフルは、きょとんとして顔を見合わせました。

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「いいや、違うよ。あのカーネーションの魔法は“魔除け”なんだよ。」
「霊的な魔法的な、あらゆる干渉から一日だけ守ってくれるの。朱志香ちゃんに、ト
ラブルを移し変えるなんて効果は、ないはずなんだけど…?」
「いや、そんなことはないぜ? 母さんの頭痛は、私に移ってたし。」
~
 ゼパルとフルフルはもう一度顔を見合わせます。
 仮にも悪魔。授けた魔法のことで、ニンゲンに違うと言われると、ちょっとプライ
ドが傷つきます。

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「ふーむ、僕たちは何だか納得が行かないね!」
「えぇ、これでは悪魔の名折れだわ。ちょっとカーネーションの魔法のこと、もっと
よく調べてみましょうよ!」
「「僕らの名にかけて、絶対に真相を解明するよ!!」」~
「い、いやいいよ…。お陰で、母の日のちょっとした贈り物になったし。ありがとう、
感謝してるよ…。」~
「「いいや、ダメだね!! 僕たちのプライドにかけて、絶対に調べるから!」」~
 ゼパルとフルフルは、一方的にそう言って、姿を消しました。
 朱志香はやれやれと肩を竦めながら、魔法陣を消しました。
~
 もうあの賑やかな二人に会うことはないでしょう。~
 ……来年の誕生日には、ちゃんと真心を込めて自分でプレゼントを探すことに
しましょう。
 楼座叔母さんが進めてた、頭痛によく効くハーブの紅茶なんかどうかな……。
~
こうして、朱志香の母の日は終わるのでした……。

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 一方、ゼパルとフルフルは、どうして夏妃を加護するだけの魔法なのに、朱志
香にトラブルを押し付けるようなことになってしまったのか、頑張って調べてい
ました。~
 その結果、………おかしなことがわかりました。~
「右代宮夏妃は、どうやら、ずいぶん昔に、どこかの悪魔か精霊と契約をしてた
みたいだね。」
「その契約が、カーネーションの魔法で一日の間、ないことにされてたのね。」
「夏妃は頭痛持ちだそうだから、頭痛と引き換えに、何かのお願い事をしたんじ
ゃないのかな。」
「なら、それは夏妃一人の問題で、朱志香とは関係ないはずだわ。」
「……確かに! こうとなったら、夏妃のことを徹底的に調べてみよう! 一体、夏
妃はどんな精霊と、何を契約していたんだろう?!」
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 皆さんは、わかりますか?~
 ゼパルとフルフルと一緒に、ちょっと考えてみてから、ページをめくってみて
下さい。
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 そこにいるのは、生まれたばかりの朱志香を抱く夏妃の姿でした。
 これは、夏妃が契約をした時の光景です。~
~
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「やぁ、可愛い娘だ。きっと君に似て、美しい子に育つぞ!」
「どうでしょう。私は頭痛持ちだから、この子にもそれが受け継がれないか不安で
……。」~
 蔵臼と夏妃が、赤子の朱志香をあやしながら語りかけています。~
「あぁ、どうか神様。ようやく授けていただいた我が娘を、どうかお守り下さい。きっ
とこの子は頭痛持ちでしょう。いいえ、私と同じで、要領が悪かったり、すぐにトラブ
ルに巻き込まれたりする不運の星に愛されているでしょう。どうかこの子に健康
で、素敵な運命をお授け下さい。頭痛も不運も、朱志香の分も全て私が引き受け
ますから……。」~
 夏妃の血にも、人ならざる高貴な者に通じるモノがあったのかもしれません。
 その夏妃の願いは、彼女も知らないうちに、……高貴な存在との契約になってい
たようでした。
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 だからその日より。
 夏妃の頭痛は、二人分になったのです。~
~
~
RIGHT:<おしまい>

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RIGHT:うみねこのなく頃に
RIGHT:朱志香の母の日プレゼント~
RIGHT:2010年5月2日 el Dorado -エル・ドラード- 頒布小冊子

IP:125.198.23.20 TIME:"2010-05-03 (月) 05:28:31" REFERER:"http://umineco.info/?cmd=edit&page=el%20Dorado%E9%A0%92%E5%B8%83%E5%B0%8F%E5%86%8A%E5%AD%90" USER_AGENT:""