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第六話『Dawn of the golden witch』本文抜粋 の変更点


ここは、第六話『Dawn of the golden witch』の本文抜粋ページです。
ゲーム中のテキストから、考察に関係しそうな部分を時系列順に抜粋しました。
不足がございましたら、ご自由に追加ください(ただし、出来るだけ本文以外の内容は追加しないで下さい)。
多少編集している部分がありますが、解釈に誤解を生じる編集はしていないつもりです。

「…End of golden witch。読ませてもらいました」(縁寿)
彼女の最新の偽書、「End」は、その作中で少なくとも親族たちを7人は殺している。いやいや、彼女のこれまでの偽書、「Alliance」や「Banquest」を含めれば、どれだけの親族を、何度、惨たらしい方法で殺しているやら…。

…だって、ほとんどの場合、出版社から何の連絡もなくて、そのまま明日、新島に出発してしまうのだから。

「………私、いつからここに座っているのか、記憶がないの。だって、私は確か、大月教授とはアポイントが取れてたけど、伊藤幾九郎の件では、出版社から返事がなくて、……結局、この日は一日、何も出来なかったんじゃなかったっけ…? 天草は、……あの、大きな黒いバッグを、受け取りにいったんじゃなかったっけ…?」(縁寿)

そう。天草は新島に出発する直前に一度、別行動をし、…知人に武器を手配してもらったみたいなことを言って、あの大きな黒いバッグを受け取ってくるのだ。それが、今日じゃ、……なかったっけ………?

……直感する。これは新作なのだ。彼女の未発表の最新偽書……。
「Dawn of the golden witch」(縁寿)

「……もう茶番は終わりにしましょう。…あんたは誰。……私の記憶に、こんな出会いはないわ」(縁寿)

確かに八城十八とコンタクトを取ろうとはした。でも結局、会えなかったのだ。だからこれは全て、虚偽。

「……どうして私は生きているの? ……私は名前を明かしたルール違反で、酷い殺され方をしたと思ってたけど…?」(縁寿)
「この世界での死は2つある。……1つは駒としてゲーム盤から取り除かれること。これは、ゲームにおける死でしかなく、仕切り直せば、何度でも蘇る命だ。真里亞における、さくたろうが、その駒の最たるものであっただろう」(フェザリーヌ)
「でも、……どうかしら。…魔女のゲームの駒なら、簡単に生き返らせることが出来るんでしょ。……でも、お姉ちゃんの世界では、さくたろうは蘇ることが出来なかった」(縁寿)
「……世界でたった一つのぬいぐるみという依り代が失われたからだ。だから、駒の存在条件が崩れ、真里亞のゲーム盤では復活することが出来なかった。……そなたが、その存在条件を再び満たしてやったからこそ、さくたろうはゲーム盤に蘇ることが出来たのではないか。そう、依り代が無事である限り、何度でも蘇ることが出来る。それが駒の命というものだ…」(フェザリーヌ)
「……それが、この世界での死における1つ目。……もう1つは?」(縁寿)
「ゲーム盤の外の存在の死だ。さくたろうの話で続けるならば、この場合は、真里亞の死だ。死だけではない。興味や関心の喪失でも同じだ。……真里亞がぬいぐるみ遊びを卒業すれば、ゲームのプレイヤーとしての真里亞は死ぬ。人も魔女も神さえも。興味と関心を失えばいつでも死ねる。そして、それを取り戻せばいつでも蘇る。……しかし、神の世界には時間の概念がないから、いつ蘇るも自在だが、矢の如く時が過ぎ去る人の世では、それは容易ではないな…」(フェザ)
「そうね。1日のズル休みならともかく、3日もサボると、学校に行くのがものすごく億劫になるわ」(縁寿)
「それが1ヶ月、1年、10年。それこそ、魔女の世界のように、千年にも及んだら?」(フェザ)
「……なるほど。ズル休みもそれだけになればもはや、社会における”死”ね。……それだけの長い間、死んでいたら、社会的な遅れを取り戻せないだけじゃなく、当時のモチベーションだって、絶対に蘇らないわ……それはつまり、命があっても、1度死んだのと同じことだわ。二度と、……元の自分には戻れない蘇れない」(縁寿)

(赤字)あのベアトリーチェが蘇ることは、二度とない(フェザ)

「……戦人は、ベアトを本当の意味で蘇らそうとしているのかもしれない。人の子らの、諦めきれぬ夢、だ」(フェザ)
「あんたはさっき赤を使って、それはないと否定したわ」(縁寿)
「……”あのベアト”が蘇ることは、決して無い。しかし、もう一度”ベアト”を生み出すことは、不可能ではないということだ…。忘れたか、第1のゲームの最後で、ベルンカステル自らがベアトの正体を語ったはず…」(フェザ)
「……思い出したわ。…ルールが具現化した存在、みたいなことを言ってた」(縁寿)
「そのルールと情報が練り上げられ、最終的に、あのベアトリーチェという魔女が形作られたのだ。それを再びなぞれば、同じベアトリーチェをもう一度生み出し、それをもって復活と呼ぶことも出来よう…」(フェザ)

「ベアトを純粋に尊敬するぜ。…よくあんなややこしい物語をあっさりと作ってみせたもんだ」(戦人)
「…あっさりとではありません。……ベアトリーチェさまも、深く深く悩み、物語を生み出しては、矛盾に悩み、常にロジックエラーと戦われておりました」(源次)
「ロジックエラー?」(戦人)
「物語の表裏が合わぬこと、矛盾することでございます。……これが生じると、ロジックエラーと呼ばれる致命的な反則手となり、即座にゲーム盤は破綻、崩壊いたします。魔女側が犯せぬ、最大最悪のミスです」(源次)

「……その6年前の罪。……これまでの物語のどこかに、それが隠されていたとでも言うのかしら…」(縁寿)

「本来、人は人であり、人格そのものを指して人とは呼びません。しかし、人格を人と認めるニンゲンたちにとって、それはさながら他人のようなものでしょう…」(八城)
私たちにとって人格が人そのものならば。たとえ同じ肉体を共有していても、異なる人格を指して別人であると言い切れるだろう。人は同じ人間であっても、別人になる得る。いや、生い立ちと無限の可能性によって、無数の数の別人になる得るのだ。

この八城十八という人物を好きになるのは、あまりに困難だ。……しかし、彼女が書くこの偽書は、……まだ冒頭の部分だけとはいえ、確かにメッセージボトルの物語と、とてもよく似た何かを感じる。メッセージボトルを記した”ベアトリーチェ”と、八城十八は別人。……であるにもかかわらず、その物語は、同じ匂いを持つ…。

本当は、新島の港に親族たちを迎えに行くのは、朱志香と嘉音のはずだった。しかし、嘉音が、仕事があるからと突然言い出したので、熊沢と代わったのだ。嘉音には仕事など、なかった。それを紗音は知っていた…。

「譲治さまの描く未来の夢を、姉さんは叶えられない。今日までよく騙し通してこれたものだと思うよ。そうやって、いつまで譲治さまを騙し通せるつもりなの? 自分が家具であることを、未だに話せない姉さんが」(嘉音)
「……家具とかニンゲンとか、…そんなの関係ない。……譲治さまは、私の全てを受け止めてくれると思うの。……私ね?……求婚、…受けてみようと思うの」(紗音)
紗音は天井を見上げながら、……自分と譲治で描ける新しい未来の想像を語った。その表情は、未来への不安はありながらも。……愛に生きることを覚えた喜びも浮かんでいた。
「……私の生きたいように生きてみたい。……もう、家具だからとか、ニンゲンだからとか。…そういうのに怯えるのは、止めようと思うの」(紗音)

「嘉音くんのことなら、私は何でもわかる」(紗音)
「本当にわかってるなら、どうして聞くんだッ! だから、……僕なりに応援してるんじゃないか!! そうでなかったら、……僕だってッ!!」(嘉音)
「もし。……嘉音くんが心の底からお嬢様を愛していて、……それが、私の譲治さんへの想いと同じか、それ以上だと言えるなら。………私は、あなたと決着をつけなきゃならない。それが、お互いのため。………嘉音君の思いを、私を理由に、諦めないで」(紗音)
「僕のわがままが、姉さんの幸せを傷つけるかもしれないのに……?」(嘉音)
「私も自覚してるよ。……私の幸せが、……嘉音くんを傷つけることを。私の恋が実っても。君の恋が実っても。……私たちは互いを祝福しよう」(紗音)
「うん。……約束する。そして僕が勝ったら。……お嬢様を愛し、……姉さんも大切にする」(嘉音)
「ありがとう。でも、私が勝ったら。……君と島を忘れて、ここを永遠に出て行く」(紗音)

「……(嘉音の本名は)嘉哉と、言います」(嘉音)

「……このベアトを、かつてのベアトと同一人物と呼ぶのは、酷な話だわ。これはまったくの別人じゃない」(縁寿)
確かにこのベアロはルール上は本人かもしれない。……しかし、そうだと認めるには、あまりに彼女に気の毒な話だった。
「………それでも、このベアトは戦人の役に立ちたいと思っている。…健気な話だ」(フェザ)
「それがベアトリーチェという魔女の意味なの? お兄ちゃんに永遠の拷問と称しておかしなゲームに引きずり込む? 意味わかんないわ」(縁寿)
「千年を経れば人は別人にもなり得ると、そなたも理解しているはず…」(フェザ)
……少なくとも。ベアトリーチェは、戦人のために生まれてきた、無垢な存在だった。今の弱々しい彼女には、恐ろしい連続殺人事件の引き金を引く勇気も、そんなつもりが毛頭ないことも、容易に見て取れる。なら、……私たちのよく知る、あの物騒な魔女は、生まれてから千年を経て、変容した存在だということになる。
「……千年とか偉そうな単語がよく出てくるけど、魔女の世界ではどうも、長い月日を示す別称として使われてる気がするわ」(縁寿)
「神の世界に近付けば近付くほどに、時間の概念は曖昧になる。6年も千年となるし、1000年がほんの一眠りにもなる。……ほんの2週間の月日でさえも百年の魔女を名乗るに相応しい永遠となりうるのだ…」(フェザ)
つまり、あの無垢なベアトが、あの残忍なベアトに、……千年という名の6年を経て、変容していったことになる…。じゃあ、その6年の間に、お兄ちゃんを恨むようなトラブルがあったとでも言うのだろうか。

「彼女の煉獄を巡る旅が快適であるよう、そして保護が与えられるよう、無限と有限の魔女、プブリウス・ワルギリア・マロの名において要請します」(ワルギ)

ミステリーに造詣のある南條

「他にも蜘蛛の巣が魔除けに効くとも聞きました」(紗音)
「あれ? それは悪食島の悪霊が苦手な方じゃなかったっけ? 熊沢さんが詳しいよな、そういうの」(朱志香)

「……妾は黄金の魔女にして、六軒島の夜の支配者。そなたは妾の妹だ。妾は、そなたが生まれるよりずっと前からここにいる」(姉ベアト)

「ここは、……どこですか? お屋敷の、ホール……? ……あ」(雛ベアト)
ベアトは、はっと息を呑む。そこには自身の肖像画がなかったからだ。……ということはここは、少なくとも2年以上は前の世界、ということだろうか…。

「……夜は妾の時間。そして夜の屋敷は妾のものだ。金蔵の間抜けは、相変わらず妾を蘇らせようだの捕らえようだのと躍起になっている。皮肉な話よ。その妾は、こうして堂々と毎晩、屋敷を支配しているというのに」(姉ベアト)
「あなたは、……ここで何を…?」(雛ベアト)
「体を失い、あの憎々しい鎮守の社により魔力もない。しかし、わずがずつに日々、魔力は蘇りつつあるのだ。……最後には見事復活を遂げ、あの金蔵を嘲笑ってやりたいぞ。妾は見事、そなたの檻を抜け出したとな…! その笑いだけを楽しみに、夜な夜な徘徊して暇潰しをしている亡霊といったところよ」(姉ベアト)

「……私はその、今でもそうなんですが、うっかり屋さんで…。よく、ものをどこにおいたか忘れたり、鍵を掛けたつもりが忘れちゃったりとかして、……迷惑を掛けてたんです」(紗音)
「でも紗音は途中から克服したんだぜ、その忘れっぽいの」(朱志香)
「……うふふ。たいしたことじゃないんですけど、……その、こまめにメモを残すようにしたんです。大切なものはどこに置いたのか、ちゃんとメモして。…日々繰り返すことは、メモにチェックリストを書いてちゃんと点検して……」(紗音)

「……魔法の原点の一つだわ。過程の、虚飾」
量販品のぬいぐるみだって、……小さな魔法で、世界でたった一つの、母の愛に満ちた素敵なぬいぐるみに生まれ変われるのだ。

「ここまででわかることは、やはり、六軒島の夜の支配者と呼ばれた、亡霊ベアトリーチェは、存在しないということだわ。夜の屋敷で起こる不可解な現象の、総称に過ぎない。即ち、ベアトリーチェとは人物名ではなく、現象名に過ぎないのよ。奇怪な何かが起これば、それは全て、黄金の魔女の仕業…。そういう”魔女の居得る環境”こそがベアトリーチェ自身。……それが累積して、1986年に至る。……これこそが、真犯人が被っているヴェールなのよ。そしてそれを被っているのは紛れもなく、ニンゲンの誰かだわ」(縁寿)
「この、魔女たちの過去物語の時点ではそうも断言できよう。……しかし、その論法だけで、1986年も戦い抜けるとは思えぬぞ……?」(フェザ)

「秘密の仕掛けと細工はノックス第3条に違反デス。ただし、その伏線が示された時のみ、ノックス第8条により許されマス」(ドラ)

「ヱリカさんくらいのお歳の方が、一番、自分自身との付き合い方が難しいと思います」(紗音)

「…自分が、異性に魅力的に見てもらいたくて努力した振る舞いが、必ず思ったとおりの結果を導くとは、限りませんから」(紗音)
「へぇ。……紗音にもそういう経験が?」(譲治)
「もちろんです。……私だって、男の子の気を引きたくて、出来もしないお化粧をして恥をかいたり、……うふふ、恥ずかしい失敗の思い出がたくさんあります」(紗音)

「その後、戦人くんは色々あって親族会議に来なくなったけど、留弗夫おじさんから彼の近況は聞いていたよ。……叔父さんもかわいい人だね。戦人くんとあんなにいつもケンカをしているのに、…戦人くんの近況を常に気に掛けていた」(譲治)
「……そうですね。私も聞かせてもらったことがあります。……明日夢さまも呆れておられましたっけ。……学校では大層、女性に人気で、トラブルが絶えないのはきっと留弗夫様の血のせいに違いないと」(紗音)

「初恋じゃなかったら、結ばれちゃいけないんですか…? 初恋の人を忘れたら、それは裏切りなんですか…? 恋って、……そんな単純じゃない。いえ、……単純かもしれない。……だって、恋なんて簡単。……常に、今の。……今の自分の正直な気持ちだけが、正解なのだから。だから昔の話も馴れ初めも、何も関係ないんです」(紗音)

(紗音と嘉音が黄金蝶のブローチを取り出すのを見て)「懐かしいぞ。あれは確かに、妾が紗音に与えたもの。……嘉音が踏み潰して以来、どこへ紛失したかと思っていたら、まだ持っていたのか」(姉ベアト)

「ある夜、紫の雷が鎮守の社を打ち砕いたのです。島々の者たちは、凶兆だと囁き合いました。おぉ、今思えば、あれこそがベアトリーチェさま復活の徴だったに違いありません」(熊沢)
「その鎮守の社は、悪食島の悪霊を封じるために、旅の修験者が建立した。そうでしたね?」(ヱリカ)
「ええ、そうでございます。強い神通力をお持ちだったということで、その力を鏡に込め」(熊沢)
「霊鏡として社に奉納し、悪霊を封印した。……少し違和感を覚えます。……悪食島の悪霊を封印する社が、どうしてベアトリーチェも封印するんです?」(ヱリカ)
「は、……はぁ…。それはその、霊鏡の神通力が…」(熊沢)
「……なるほど。東洋の悪霊も西洋の魔女もOKの、便利な霊鏡だったから、というわけですか。……わかりました。すっきりはしませんが、そこは折れることにしましょう。しかし、どうしてベアトリーチェが蜘蛛の巣を嫌うのかわかりません」(ヱリカ)
伝説では、悪食島の悪霊は蜘蛛の巣を嫌ったため、魔除けとして近隣の島々でも尊ばれたらしい。
「しかし、それ、悪食島伝説の話です。そもそもベアトリーチェの魔女伝説の発祥は、この島に引っ越してきた右代宮金蔵が、ミステリアスな黄金伝説と、それを授けた魔女という名の愛人を吹聴してから始まったものです。つまり、悪食島の悪霊と、黄金の魔女ベアトリーチェは本来、まったく異なる存在のはずなんです。なのに、設定が同じになっています。金蔵さんの書斎のドアノブは、サソリの魔法陣が描かれていて、それは西洋魔術では魔除けを意味する、だから西洋魔女のベアトリーチェは、ドアノブに触れられない。……これは理解できるんです。でも、蜘蛛の巣に限っては、ベアトリーチェが嫌う理由がありません。私の知る限りでも、西洋魔女の苦手なものに、蜘蛛の巣があったという記憶はありません。むしろ蜘蛛は、魔女の仲間や眷属では? 思うに。……悪食島伝説の悪霊と、魔女伝説のベアトリーチェ。この2つの異なる伝説が、少し混交しているように思います。いえ、混交どころか融合かもしれません」(ヱリカ)

ベアトは、恐る恐る、……蜘蛛の糸に指を伸ばす…。そして、…………触れる……。
「…………………。……平気です」(雛ベアト)

姉のベアトは、白く透き通った指を立てて妹によく見せた後、……すっと、銀の糸をなぞった。シュウ、っと、……髪が1本燃えるような異臭が立ち込める。呆然としているベアトの前に、その指が再び示された。そこはまるで、剃刀で一筋の傷を付けたかのような、……鋭利な火傷の痕が残っていた……。

「魔術を研究する者ならば、人的にも霊的にも隔絶された隠れ家が必須となる。……金蔵が自らの書斎を閉ざし、このような魔除けを施したとしても不思議はない。…そしてそれは困ったことに、妾にもこうして効果がある」(姉ベアト)
おもむろにドアノブを握り締める。すると蜘蛛の巣の時とは比べ物にならない、痛烈な焼け爛れる音が響き渡った。(雛ベアトは)恐る恐る、ドアノブを突っつく。……まったく平気。ゆっくりと、……手のひら全体で触れるが、ひんやりとした感触が伝わるだけだった。

「妾も、年に数度しか訪れぬ稀な客人である彼(戦人)のことは知っている」(姉ベアト)

「かつて魔女は教えてくれました。……この世の一なる元素。それは愛だと」(紗音)

「紗音も嘉音も、……いえ、あえて”家具”と呼ぶわ。……家具たちは最初から一貫して、ニンゲンとは恋愛が出来ないと主張してきた。そこに、黄金蝶のブローチという魔法が介在し、その魔法という奇跡の結果、譲治お兄ちゃんとの恋愛が成立した。そう主張してるわ。”再び魔法の奇跡がなければ、結婚は出来ない”。……それが紗音と嘉音の、二人の共通認識になっている。……これがどうしても理解できないの。つまり、こういうこと。紗音は譲治の婚約を受けているけど。……魔法の奇跡がなければ成就されない障害が残っていると知っていることになる。そしてその障害は、二人の努力では取り除けないとも。だから、魔法という奇跡が必要。そして、その疑問は、嘉音にも向けられるわ。……朱志香おねえちゃんとの恋路は始まったばかりだけど、二人の気持ちはまっすぐ。何の障害もないわ。黄金蝶のブローチの力なんか関係なく、もう恋仲になれてる。……何年もの交際を経て、やがては結婚に行き着いても、何もおかしくない。こちらも障害は何も存在しないのよ」(縁寿)

しかも、どうやら、一個のブローチは、一度の奇跡しか与えられないかのような描写が見て取れる。だから紗音は、そのたった一つの奇跡を自分が消費してしまうことで、嘉音の恋路が自動的に永遠に閉ざされてしまうことに、躊躇していたかのように思えるのだ…。

「頑なに恋が出来ないと嘆いていた家具たちに、それを許すことの出来る、黄金蝶のブローチって。一体、何だって言うの?」(縁寿)
「もちろん、魔法の結晶であるぞ。ただし、多くの魔法と同様に、反魔法の毒素で焼かれもする」(姉ベアト)
「…つまり、魔女や魔法を信じる者にしか、効果がないということなんですね」(雛ベアト)

「こ、これは、魔法になるでしょうか……?」(雛ベアト)
「くっくくくくく……。うむ。なるとも。(金字)そなたが魔法にて、伏せられたカップの中に黄金の花びらを生み出した。見事な魔法であったぞ」(姉ベアト)

「話を戻すけれど、この程度の、魔法やおまじないを信じるという程度の話では、”頑なに恋が出来ないと嘆いていた家具たちに、それを許すことの出来る、黄金蝶のブローチとは一体何か?”という答えに、答えられない。紗音はかつて、譲治お兄ちゃんとの出会いのきっかけを作ったのはブローチのお陰だけど、それ以降は魔法の力を借りずに関係を深めたいと言って、ベアトにブローチを返そうとさえしたわ。彼女はその時点で、一度は魔法の奇跡と決別したはず。……なのになぜ再び、その力を必要としているの?」(縁寿)
「さぁて。……恋と結婚は別物としか、言いようがないであろうな」(フェザ)
かつて、紗音と譲治を結びつけたブローチの魔力は多分、おまじない程度だったと思う。しかし、今。家具たちが、それぞれの恋愛の成就を願ってブローチに求めている魔力は。……おまじないのような、曖昧なものではない。もっともっと強力な、そして、”別の解釈の魔法”のように思えるのだ。
「魔法で生み出された家具の、僕がここに存在すること自体が、……魔法の奇跡の存在する証拠なのです。1つのブローチは1人の願いしか叶えない。……家具の僕たちは、この1つのブローチによって、どちらかしか、結ばれ得ないのです」(嘉音)
これが、在りし日の、甲高く笑うベアトリーチェが蒔いて残した、恋の火種の、最後の一粒。

「源次さんと熊沢さんに習いました…。源次さんがクッキーを焼くのがお上手だったなんて、とても驚きました」(雛ベアト)
「ほっほっほ。最近は全然ですけど、昔の源次さんは、それはもう、色々なお料理を作ってくれたんですよ。特にお菓子作りはお上手で…!」(熊沢)

「どうしてあんたはお兄ちゃんにああも尽くすの? まるでそれは、……あなたという駒の目的かのようだわ」(縁寿)
「はい、………はい。…それが、私が生み出された目的だからです」(雛ベアト)
「あんたを生み出したおにいちゃん自身が、その目的を与えたの?」(縁寿)
「それは違う。…戦人はゲームマスターとして、”そういう役目を持った駒”を、盤上に置いたに過ぎない。……そして、彼女という駒を生み出したのは、このゲームを生み出した最初のゲームマスターである、ベアトリーチェ自身だ…」(フェザ)
このベアトの行動原理は、お兄ちゃんを慕う女の子そのもの。でも、ならば彼女は何? お兄ちゃんが好きなら、慕うのも尽くすのも、自分自身でするべきだわ。それをどうして、……”彼女という駒”を生み出し。自分以外の存在にやらせるの……? それじゃ、……もしもお兄ちゃんが振り向いてくれたとしても、それは駒の彼女に対してであって、……彼女という駒を生み出した、創造主に対してではなくなってしまうじゃない。

「ここに集いしは、奇跡なくして恋を成就できぬ呪われし者たち。その奇跡を与える、黄金蝶のブローチの力は、泣こうが喚こうが今宵限り、最後のチャンス! それは1組の番にしか与えられぬ!」(姉ベアト)

「朱志香が信じぬというなら、破綻の最後だけ語ろう。……嘉音は使用人を辞め、この島を去る。永遠にな」(姉ベアト)
「君は島を出て思い人を探す旅に出るだろうね。しかしそれは決して報われない!」(ゼパル)
「そなたが魔法の奇跡を紗音と譲治に譲るなら。……二人は結ばれ、島を出る。……そして嘉音もまた、島を出る。それは避け得ぬ、運命なのだ」(姉ベアト)
「で、……では、魔法の奇跡を得られたなら…?」(雛ベアト)
「無論、嘉音は島に留まり、いつまでも朱志香の傍にいる」(姉ベアト)
「……ただ。…その場合は、私と譲治さんもまた、結ばれません」(紗音)
「………僕たちは、自らの幸せと未来を賭けて、……戦わねばならぬ、運命なんです」(嘉音)
「……その魔法の奇跡は、そなたであっても、享受できるものであるぞ。黄金蝶のブローチの奇跡は、………そなたの願い、……戦人への好意を認められたいという願いさえも、叶えることは容易い。……そして、その奇跡なくして、むすばれることも、また、…………ない」(姉ベアト)

「母さんの習い事で、……1つだけ感謝しているものがあるよ」(譲治)
「へ、……へぇ、それは何曜日のかしらァ……?!」(エヴァ)
「長期休暇の度に集中的に習わされた、武道教室の数々だよ…!!」(譲治)

「私は、冷酷で知的。合理的で経済的。……カルネアデスの舟板のような状況があったら、躊躇なく相手を蹴落とすわ」(霧江)

(明日夢は)難しい話は一切聞かない。話しても、わからないからと首を振る。でも、誰よりも体を気遣ってくれて、静かに毛布をかけて朝までじっと側にいてくれた…。

「明日夢さん、………あんなにぼんやりしてそうなのに。…留弗夫さんを咥え込んだら、離しやしない。……”だから何ですか、どうぞお引取り下さい”ですってよ。……バスひとつ乗るにも、怖い怖いと縮こまってた、あの小娘がね。………あの時、悟ったわ。…本当に狡猾だったのは、彼女だったってね。……そうよ、乗り物恐怖症だって留弗夫さんの気を引くための嘘だったわ」(霧江)

「せめて。私の産む子だけでも認知させたかったわ。……留弗夫さんもそのつもりはあったみたい。病院もきっちり手配してくれたし、明日夢さんの出産が近付いても、甲斐甲斐しく私のところにも来てくれてたっけ」(霧江)

「私は幸運よ。その地獄が18年で終わったから」(霧江)

「今の私は。……留弗夫さんを私のところに繋ぎ止めるためなら、何でもするわ。そして留弗夫さんの敵には一切容赦しない。……あの人が望むならば私は、人殺しさえも、躊躇しないかもしれない」(霧江)

明日夢の死は、断じて殺人ではない。しかし霧江は、死んでしまえと常に呪い続け、……18年目にしてとうとう、自らの手で殺してやろうと決意するに至ったのだ。そして、……実際に、……殺すための刃物さえ用意した………。

「………言ったでしょ、嫉妬の地獄で生きてきたって。刺されそうになったことの二度や三度あるんだから。わかるのよ、不意打ち直前の雰囲気が」(霧江)
霧江は鉄拳をひょいとかわし、その拳に手を添え、激しく壁へ打ち付ける。

紗音のシフトが週に3回程度として

(楼座は)1億近くのカネを、何とか3月までに用意しなくてはならない。

「……楼座さまは、真里亞さまの父親に、借金の連帯保証人を求められ、それを引き受けられました」(嘉音)
「……………籍こそまだだったけれど、……これから結婚する相手で、パートナーだと思ってた。私の名前がなければ借りられないお金なら、それに協力するのが、未来の妻の役目だと思ったのよ」(楼座)

マリアが吠えると同時に、客間全体が、真っ赤な魔法障壁の立方体で隔離される。嘉音を断じて逃がさない結界を、概念化した密室だ。
「…失礼します、真里亞さま。ゼパルさま、フルフルさまとの契約により、お命、頂戴致します…!」(紗音)
「こんなところで負けてたら、諦めがつかないもの」(紗音)
「………そうさ。こんなとこで負けてたら、諦められない」(嘉音)

……それは、夏妃の霊鏡。それを覗き込んでしまった時、……バチンと電気が爆ぜるような音が聞こえた。その音は、見えない手に束縛されていた夏妃を解放し、そしてベアトを人形のように後ろへ転倒させた。

……私は、戦人さんを愛し、そして愛してもらうために生まれてきたのです………。

「あなたの書いた物語は”愛”が何度も繰り返される。でも、それは真里亞お姉ちゃんの主張でも、ベアトリーチェの主張でもない。……八城十八の主張だわ」(縁寿)
「……そうです。それこそが、私が語りたいこと。そして、私なりの”答え”なのです」(八城)

「……魔女は魔法を以ってしても、自らに出来ないことを出来ない。……自らに出来ることのみ、魔法で”装飾”できる」(縁寿)

私(ヱリカ)は、2階の貴賓室、蔵臼の書斎、夏妃の自室、そして1階の客室、客間の全ての現場を足早に訪れ、前回、疎かにした自らの目での確認を終える…。

「その時、郷田さんは使用人室にいたはずだろ?! 玄関が開いたら、使用人室にチャイムが鳴る仕掛けがあったはずだぜ? 来客に気付かねぇわけはねぇ!」(留弗夫)

「……妻がそういうシフトを組んだのだ」(蔵臼)

「……あの喧嘩慣れした霧江が、何の抵抗もなく、綺麗にぱったり殺されるかってんだ。相手の指くらいは食い千切る女だぜ…」(留弗夫)

「楼座は、真里亞ちゃんのことが絡めば、子連れ熊みたいに怒りっぽくなるヤツだ。……仮に相手が銃で脅したとしても、怯むようなヤツじゃねぇ」(留弗夫)

「例えばインシュリンとか、機知の薬物でも一時的に仮死状態を作ることは不可能ではありません」(エリカ)

「……あんた(戦人)は知らないだろうけど、私はこの芝居を見るために、すでに高い入館料を払ってるのよ?」(ベルン)

「17人いる島だから、6を引いて5を引いてさらに6を引けば、ちょうどゼロになって、所在不明の人間はゼロになる。という思い込みは大変危険です。戦人さんも、この辺の名前と人数のトリックで、第3のゲームの南條殺しで、さんざん苦しめられたはずです」(ヱリカ)
「…………そうだな。……あの時のトリックは、18人分の名前と、実際に存在する18人が食い違うことで、未知の人物が混入する余地を許していた」(戦人)

「ロジックエラーとは…。……”不可能になってしまった手品”という意味ね」(縁寿)

”魔法は、出来ることしか、出来ない”。つまり、魔法なくして出来ることのみが、魔法で残せる結果なのだ。はっきり言い切ろう。魔法は大別して2種類がある。巨人を呼び出したり、塔を地面から生やしたり。……でも、蓋を開けてみれば、薔薇庭園には何一つ起こっていなかった、というタイプの魔法。これはただの”幻想”。魔女の言うところの、半魔法の毒素が一切ない場所での、観測者なき”嘘”だ。結果を伴う必要のない魔法は、もっとも簡単な魔法で、そして”嘘”だ。これは取るに足らない妄想、幻想、白昼夢に同じ。そしてもう1種類が、本当の魔法とも言うべき、”結果を伴う魔法”。つまりこの場合で言えば、観測者が、実際に中身が空であることを確認して伏せたカップの中に飴玉が現れ、それを実際に観測者が得られるという、”結果を伴う魔法”だ。幻想の魔法と違い、結果の伴う魔法は、すでに私(縁寿)が看破しているある大きなルールがある。それは自分の成し得たことの観測者なき過程のみを、人は魔法に昇華できる、というもの。もっと平たく、冷酷に言い切ろう。つまり、全ての魔法は手品なのだ。”魔法なくして出来ることしか、結果を伴えない”

「自分のトリックを否定する赤き真実は、大きなルール違反だ。しかし、その赤き真実に抵触しない別のトリックに即座に差し替えられるなら、いささかアンフェアではあるが、その赤き真実は認められる」(フェザ)

「かつてのあんたは、立派な読書家。……推理小説を愛し、密室犯罪を愛した、……不可能犯罪の超エキスパートだった。あなたはいくつもの密室トリックを読み漁り、……究極にして一なる原始のトリックに気付き、それを魔法体系の核にしたわ」(ラムダ)

「彼女(雛ベアト)にも、試練を乗り越えた二人を祝福する資格はあるんだもの!」(フルフル)

「………あの二人は本当に、戦人を救い出せるのかしら」(フルフル)
「救い出せるさ! 愛の奇跡さえあればね…!!」(ゼパル)
「そうね、ゼパル! 愛の奇跡さえあれば絶対に!」(フルフル)
「「ゼパルとフルフルから! 愛のヒントのヒントをプレゼント!! 僕たちの試練を、観測者の立場から見てみるといいよ!!」」(ゼパル&フルフル)

19.それは、18人しかいないはずの島に、19人目の幻想を見た時、魔女を指して数えた数字。それは、この物語を生み出すのに、かかった月日の数。それは、避けえぬ今日と言う日に至るまでの月日の数。そしてそれは、……この世界の、本当の領主の、年齢。

「どうして、……僕たちは生まれたんだろうね。生まれた時、すぐに死ねればよかったんだ」(嘉音)
「……それは、お父さんの罪だね」(紗音)
「そうさ。だからあいつも死ね。みんな死ね」(嘉音)
「うん。みんな死ぬよ。もうすぐね。……そして、すぐにみんな蘇って合えるよ。もう私たちは、籠の中の小鳥じゃない」(紗音)

「私たちの、どちらかが、死ぬ」(紗音)
「……あるいは同時に撃ち合って、二人とも死ぬよ」(嘉音)
「あ、それもありか。………それでも全然ありだね」(紗音)
「そうさ。それであっても、必ず僕らの恋は、成就されるのだから」(嘉音)

…あっちのシャンデリアにいるのは、シエスタ127。2㎞先の対人目標を精密射撃で粉々に粉砕できる、やり過ぎのバケモノ狙撃手。…向こうのシャンデリアにいるのは、シエスタ20.発射速度は毎分6000発。しかし今日は携帯弾倉なので、全弾を2秒で吐き終える。

「愛し合う二人以外に、本来は何もいらないんだ」(ゼパル)
「だから、それが”二人”でない時、……私たちは決闘でその数を”二人”にしなくてはならない」(フルフル)
「世界を生み出す最小の人数は二人」(ゼパル)
「二人が揃って初めて、世界は生まれ、恋は成就できる」(フルフル)
「だからこの決闘は、必要なんだ」(ゼパル)
「彼らがその人数を満たすために」(フルフル)

「どうして家具はッ、恋をしちゃいけないんですかッ!!!」(雛ベアト)
「「魂が、一人に満たないからッ!」」(ゼパル&フルフル)
「紗音も嘉音も、駒である君(雛ベアト)ももちろん!!」(ゼパル)
「あなたたちはみんな家具! 魂が一人分に満たないから人間以下ッ!!」(フルフル)

「これは破綻のための決闘じゃない。……本当の恋を成就させるための、決闘」(フルフル)
「……私には、……あなたたちの言っている意味が、……わからない……!」(雛ベアト)
「いいえ、わかりなさい。これは、……本当に人を愛することが出来るニンゲンが、誕生する瞬間」(フルフル)

「あー、俺ってさ。家庭的な子とか案外苦手なんだよな。この通り、ガサツな性格だろ? ……レディファーストとか、女の子の前では礼儀正しくとか、そういうのはさっぱり苦手なんだよな。……だから強いて好みはって言われると……。……そうだな、朱志香みたいなタイプの女なら結構好きかもな。俺がガサツなように、向こうもガサツが丁度いいんだ。……お互いよ、汚ぇ言葉遣いで気疲れなく、男女とか気にしないでバカがやれる、ラフな関係が理想かもな…! だからもしも俺に彼女が出来るとしたら、……いつも俺が朱志香とバカやってるみたいに、ハチャメチャな関係がいいよな…! え? 容姿の好み? 別にそんなのは気にしねーけどよ。まぁ、洋画とかに出てくる、金髪ボイン、蒼眼のグラマラスの彼女だったら、いっひひひひひひ、最高だぜぇ。乳揉ませろぉいってなぁ。わっはっはっはっは…!」

ーーベアトリーチェ。お聞きなさい。私はあなたに、右代宮戦人に恋する心を、譲ります。あなたは、右代宮戦人の望む女性となりなさい。あなたに、彼が望む、黄金の髪を。彼が望む、蒼い瞳を。彼が望む、彼に相応しい性格を。そして、……私の代わりに恋をしなさい。そして、許されるなら、彼に恋されなさい。私には、………もう彼を愛することが、出来ないのです。どうか、私には遂げられなかった想いを、……私には堪えられなかった想いを、……あなたが遂げて。あなたは今日より、帰りを待ち続けるのです。あなたは今日より、それを私より引き継ぐのです。だから、今日より、あなたは私ではなくなります。あなたに、私の苦悩を押し付けて、……私だけ幸せになろうとすることを、許してください。あなたは今日より、わたしではなくなります。私は今日より、あなたではなくなります。私たちは一つの魂を割いて、分け合おう。それは一つの魂には当然満たないけれど。きっと人より多くの夢を見させてくれる。

「00より、シエスタ17、シエスタ38、シエスタ45、コードR、警戒発令」(シエスタ00)

……金蔵に直接仕えることを許された名誉と厳しさ。しかし彼は、その全ての時間が厳しかったわけではない。……その威厳を保って見せねばならない家族の姿がない時、信じられないくらい子供っぽい顔を見せて、おかしな悪戯の片棒を頼んできたりするのだ。………お館様に、銃を色々撃たせてもらったっけ。旦那様は、案外やさしい人だった。僕が普段、よっぽどお館様にいじめられていると思い込んでいたんだろう。僕しか姿がない時には、まるでクラスメートに話し掛けるように、親しげに話しかけてくれたっけ。奥様はとにかく厳しい人だったな…。……女の使用人には特に厳しかったけど、男の使用人には甘いとの陰口を聞いてしまってからは、僕を目の敵にしていた気がする。でも、奥様も可哀想な人だった。……彼女がひとりの時、その肩を辛そうに下げているのを、僕は何度も見ているのだから。……郷田? ………あいつは嫌いだ。でも、まかないのシチューを褒めたら、顔を赤くしながらおかわりもあるなんて言い出した単純なところは、……嫌いじゃなかったかもしれない。そして、……朱志香の記憶。……へぇ。…お、男の子の使用人なんだ…。……君、……いくつ…? それが、彼女と最初に交わした言葉だった気がする。彼女とは、……譲治様と紗音の二人に負けないくらいの愛を築く時間が、本当はあったんだ。

「(赤字)全ての名は、本人以外には名乗れない!!」(ベアト)

戦人からは、銀で作った、領主婦人のみに許される紋章の指輪が。

「あなたは本当によい、よく考える読者だった。……あなたのような人を探すために、私たちは、物語を紡ぎ、世に放っているのです。あなたとはこれで二度と会わないだろうけれど。……いつかどこかで、別のあなたにまた会える幸運を、祈っています」(八城)

「………物語の中に登場した、フェザリーヌって魔女。あれは、あんたよね?」(縁寿)
「語るのもおこがましいですが、そのつもりです」(八城)

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