EP4名場面集
・「もちろんよ。男に、危険なリスクと一緒に恋を囁かれたらキュンキュンしちゃうわ。
…ただしイケメンに限る!」
・「3分間、待ってやる…!」
・「ならば良し!!」
・「………お久しぶりね、リーチェ。お元気だった?…というかずいぶん元気そうじゃない。あなた、若返った?私が知ってる頃より、2、300歳は若々しいわ。…………あぁ、なるほど。」
「気色悪い。……冗談は服だけにしておいて。」
「デヴィリッシュプリティの最新作、ジャックザリッパー・クリスマスブラッド。……ニンゲン界の田舎娘には理解できないセンスでごめんね?」
・「おいで、奈落へ…!」
・「……食らって噛み締めなさい、奈落の終点が一撃。……死ね……!!」
・「ねぇ、聞かせて? どうしてあの紗音とかいう家具のためにそこまで言えるの?………あんなの、ただの出来損ないじゃない。給仕一つ満足に出来ない、ガラクタだわ。」
・「本当に面白かったわ、坊や。……でもあんた、ちょっと言葉遊びが過ぎるわよ。……"そろそろ反撃してもいいかな"が最高傑作?うふふ、あなたどこかのラノベか何かにかぶれ過ぎよ?
くすくすくす!」
・「じゃあね、色男。これが本当の、ゲームオーバー。」
・推理し謎を暴く行為は、遠くの的に矢を射るのに似ている。
これまでの俺の戦い方は、矢を一本へろへろと放っては、当たったかどうか魔女に尋ね、外れて
いると言われては改めて弓を構え、再びへろへろと放つようなものだった。
そんなんじゃ、当たるわけはねぇんだ…。矢と例えるより弾丸と例えた方がいいかもしれない。
遠くの的に拳銃をパンパン撃っても、簡単には当たらないだろうさ。
……なら、どうやって当てる?
拳銃で駄目なら、……散弾銃さ!単発の弾丸じゃなく、
無数の弾丸を一度にぶっ放す"散弾"でブチかましてやるんだ…!
弾丸は散るから広範囲に着弾する。だから、鳥のような素早く小さい標的を撃つにはとても最適なんだ。
そうさ、推理はピストルを単発で撃つかのように、1つずつしかしてはいけないなんてルールはない。
……1つの仮説を立てたからといって、それだけで命中を期待するのは思考停止もいいところなんだ。
大量の弾丸を、推理を一度にぶっ放し、面で着弾させ、それが一発でも的にブチ当たれば充分。
・推理小説なんかのクライマックスはいつもこうだった。……名探偵が容疑者を一堂に集め、
たったひとつの推理を披露して、それを華麗に当てて見せるんだ。まるで、一本の矢で見事にリンゴを射抜く
ウィリアム・テルのようにだ。だからこそ、それが美徳みたいに誤解しちまってた。
……そりゃあ華麗だろうさ。一本の推理だけで華麗に真相を射抜けたら。だが、そんなのは現実的じゃない。
現実の戦争を見てみろ。まさか、みんな塹壕から長い銃を出して、よーく狙って一発ずつ応酬してるとでも?
違うだろ?!連射する、撃ちまくる、弾幕で圧倒する!
推理だってそうだったんだ。おかしな美徳のせいで、一つしか推理しちゃいけないような価値観に捕らわれていたんだ。
俺たち人間には、あらゆる推理を、可能性を無数にぶっ放すことが出来る!
弾丸は想像力。思考停止は弾詰まりも同然…!
・「さくたろ~、さくたろ~!!きゃっきゃっきゃ!!可愛い可愛い、すっごく可愛い…!ママありがとう、ママありがとう、お仕事で忙しいのに、こんなに可愛いぬいぐるみを作ってくれて本当にありがとう…!!」
「…そんなに褒められるとかえって恥ずかしいわ。全然時間が取れなくて、大したものを作れなかったの。本当は、抱えきれないくらい大きなのを作るつもりだったのにね…。」
「うぅん、これでいい!このくらいの大きさなら、いつも一緒にいられるもん。一緒にお出掛けできるもん。さくたろ~、お姉ちゃんだよ~、うりゅ~☆」
・「くす。真里亞お姉ちゃん、楽しそう。」
「うん、とっても楽しい。ひとりだったら寂しくてつまらないことでも、さくたろが一緒なら何でも楽しい。どんなニンゲンのお友達だって、夕方になったらお家へ帰らなきゃならない。でも、さくたろは帰らないし、いつまでも一緒にいてくれる。一緒にテレビも見るし、お布団の中だって一緒だし、雷が怖い夜には手だって握っていてくれる。クローゼットやベッドの下のオバケだって追っ払ってくれるんだよ。さくたろ、頼もしい!」
・『真里亞は知ってるよ。笑顔を呼ぶ魔法は、自分も笑わなきゃ出来ないってこと。』
「……うん。……真里亞は知ってるよ。だからもう、泣かない。」
『ねぇ、真里亞。ボクから楽しく過ごす提案があるよ。……うりゅ、聞いてくれる』
「……なぁに」
『ママが日曜日の深夜まで帰って来ないから。だから、ママに内緒のパジャマパーティをして遊ぼうよ。』
「パジャマパーティ…」
『今夜は眠くなるまで、ベッドの中でお菓子を食べたりジュースを飲んだりしながら、ボクと遊ぶの。』
「パジャマパーティ。……うん、楽しそう。…9時に寝なくていいの寝ないとママに怒られない」
『ママがいない時だけの、ボクと真里亞の秘密。だから今夜は、真里亞が眠くなるまで、ずっとボクたちで楽しく過ごそう。ジェリービーンズを食べながら、次は何の色を引くか当てっこして遊ぼう。ピーナッツを割って、どっちがお爺さんか当てて遊ぼう。クローゼットの中を宝探ししよう。他にも他にも!コーラとメロンジュースを合わせたらどんな味になるかな。』
「うー。 いっぺんやってみたかったけど、ママにやっていいって聞いたら駄目って怒られた。」
『うりゅー!ママに内緒で実験してみよう♪今夜はいっぱい遊んでいっぱい笑って、涙を元気で吹き飛ばしちゃおう。大丈夫、ボクと一緒だから絶対に楽しいよ!ボクが絶対に真里亞を幸せにしてあげるから。』
「うん、うん。さくたろと一緒なら絶対に楽しいよ。絶対に幸せになれるよ。ありがとう、さくたろう。もう泣かないね。飛び切り楽しく二人で過ごして、思い切り元気になってママをお帰りなさいって迎えちゃおう。」
『うりゅー!今夜はいっぱい遊んでいっぱいご機嫌になっちゃおう♪ママがいない夜にしか遊べない、秘密のパーティでいっぱい遊ぼう。ボクたちが賑やかにしてたらきっと、鏡の国や不思議の国から、たくさんの友達が遊びに来るよ。そしたらもう、ボクたちはお友達でいっぱいで、退屈なんか出来なくなっちゃう。うりゅー!』
「うりゅー!!」
・「これは、幸せな夜を記したものなの。………これが、この夜の"真実"。お願いだから、その幸せな真実を、…………新しい、そして異なった真実で塗り潰さないで。」
「…………真里亞お姉ちゃんにはこれで、……幸せなの」
「うん。 幸せ。………だから、同じ境遇の時、幸せに感じられない縁寿が、可哀想。」
………友達もなく、孤独な境遇は、今の私も当時の彼女も同じ。
そして縁寿は、……孤独な真実を、孤独な真実のままに受け入れる。
しかし彼女は、……孤独な真実を、幸せな真実に塗り替えた。
右代宮真里亞は、悲しい真実を、……幸せに変えたのだ。
・「あのね幸せのカケラも、不幸せのカケラも、どちらもいっぱいあって、世界を満たしてるの。だから、身近の幸せが見つけられない人は、どこまで探しに行っても見つけられない。……チルチルとミチルが青い鳥を探したみたいに。」
「…………そうね。そういう教訓の話だった。」
「縁寿はその正反対。……不幸せなカケラがまったくない世界を探してる。でも、それだって青い鳥と同じなんだよ。だから、永遠に縁寿は自分の幸せを、見つけられない。…………戦人はヘンゼルなの青い鳥なんじゃないの……」
・「きゃっきゃっきゃ!!真里亞お姉ちゃん、変なのー!!さくたろなんかいないよー!ぬいぐるみはぬいぐるみだもんー!布と綿で出来てるってママに習ったもんー!!歩いたり喋ったりなんか出来るわけないよー!!きゃっきゃっきゃっきゃ、きゃーっきゃっきゃっきゃっきゃ!!!」
『………うりゅ………………、………ぅ…ゅ………………、』
「さくたろ!!さくたろー!!!ぬいぐるみじゃないもん、ぬいぐるみじゃないもん、友達だもん!!うーー!!!わぁああぁあああああああーーー!!!!」
「きゃっきゃっきゃっきゃ!!きゃーッきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!!ぬいぐるみ遊びなんかより、みんなでお外で遊ぶ方がいいー!!ぬいぐるみもう飽きたー!!きゃっきゃっきゃっきゃ!!」
「縁寿なんかもう知らない!!うー!!何でそんなこと言うの、嫌い嫌い嫌い嫌い!!大っ嫌い!!」
絶交だ、絶交だ!!もう魔女の仲間になんか入れてあげないッ…!!
原初の魔女見習い、マリアの名において、魔女見習いエンジェをマリアージュ・ソルシエール魔女同盟より除名とする……!!
・「わ、私も真里亞と毎日一緒にいられたらと思います!
でも、シングルマザーですから働かなくちゃならない! 私はこう見えても会社の社長ですから、社員の生活も背負っている!! 一年中仕事で忙しいんですよ、休む暇だってないんですッ!!」
「そうぉ? でも、この三日間、お休みだったんでしょ?」
「や、休みなんかじゃありません! 私はずっと会社で泊り掛けで仕事をしていました!! 他の頼りない社員では片付けられない案件が私には山積みなんです!!」
「どうしてそんなウソ吐くの。あなたの会社の人が、三日間お休みを取ってますって言ってるのよ? 彼氏さんと北海道に行ってきたんでしょう? 娘さんを三日間も置いて…!」
「かッ、彼氏なんて知りませんッ北海道なんて知りませんッ!!! どうしてそんなデタラメ言うの?!
どうしてどうしてッ?!
なんか証拠でもあるの?!
何よあんた勝手に人の家のことに口を出さないでよ!!私は真里亞を愛してるのよ私には私なりの愛し方があるのよ勝手に口出さないでよ!!私は旅行になんて行ってないわよ仕事してたのよずっと!!
真里亞に一秒でも早く会いたくて仕事を少しでも早く片付けようと一生懸命一生懸命!!
会社に泊まりこんでずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと!!知らない知らない北海道なんて知らないわよ勝手なこと言わないでうあああああああああああぁああああぁああッ!!!
もう帰ってッ!!帰ってよおおおおおお!!
何なのよあんたはああああ!!帰ってッ!!帰ってええええええええッ!!!」
・「……………………あ、………あんた…。さっきから何をやってるの?
あんた、そのお人形さんごっこ、……外でもやってたの? お店の人の前でもやってたの……?
……………………。
だから覚えられちゃうんでしょおおおぉお、
馬鹿ッ死ねッ知能ゼロッ!! 何であんたは馬鹿なのよおおおおおぉおおおおおッ!!!
正直に仰いな。お外でお買い物をする時、ママに内緒でいつもそのぬいぐるみを持ち歩いてたのね?」
・「………ママの言うことをちゃんと聞かないから、ひとつ壊れちゃったわ。今後、ママの言うことを守らない度にまたひとつ、壊すからね。
……覚えておきなさいッ!!!」
・「さくたろうは、死んでしまいました。」
・「……あんたさえいなければ、……私はとっくに、女としての幸せを掴めたのよ……。あんたの存在が、……私の幸せをいつも邪魔するのよ……。」
・「………私だってあんたなんか生みたくなかったわよ…。
いいえ違うわ。……あんたと一緒に幸せな家庭を築けたらと思ったわよ…。……でも、あんたが生まれる直前にあいつは蒸発したわ。
私と温かい家庭を築くと言って私を騙し、永遠に私の前から消え去ったわ…!!
残ったのはあんただけ。
愛も思い出も何もない!! あの男は今どこへ? 私との日々を温かな思い出に勝手に変えて、新しい恋に出会ったかもしれない。
そして今度こそ幸せな家庭を築けたかもしれない…!!
そして私は?! あんたがいるッ!! 恋も探せない!!
男は好きに女を渡り歩いて武勇伝気取りッ! なのに女には、私にはッ!!
あんたがいる!!
あんたという重石がいるのよ、あんたのせいで私は恋を探せない、愛が得られない、一人で生きていくしかない!!
いいえ、それさえも許されてないわ、私には一人で酔い潰れたい夜さえ許されていないッ!!
あんたは誰?!
何者ッ?!
私の人生を台無しにして、私の新しい人生さえ許してくれないあんたは、私の人生の何者なのよ?!
死ねッ消えろッ、あんたなんか生まれて来た時から大嫌いッ!!
あんたがお腹の中にいた頃から、大ッ嫌いだったッ!!! それを前向きに受け容れようと、頑張って良き母を演じてきたわ。えぇ、私は頑張った!!
同世代の女性たちが、独身を謳歌し、時に恋に遊び、あるいは愛に結ばれるのを横目に見ながら、私は女と母の二足のわらじを履き続けたわ…!! その私の苦労を、誰がねぎらったの?!
誰も褒めない、讃えないッ!!
自業自得?中古品?バツイチは死ね?処女じゃなきゃ嫌ぁ?! こっちから願い下げよ、ケツの青い童貞のクソガキどもがッ!!!
必死だった私はさぞかし簡単に抱ける女に見えたろうさ、えぇ、必死だったわよッ!!
まだまだ恋をしたい年頃の私が、日々を仕事と育児で忙殺されていき、このまま老いてこのまま人生を終えるだろうと悟った時、どれほど必死だったか想像もつかないでしょうよッ!!
あんたの本当の父親ももちろん憎いわよ! でも、破局を迎えた責任は私と彼に半々だわ。私にも、逃げられるだけのしつこさがあったのかもしれない! でも、その後の破局は全部あんたのせいッ!! 私はあんたにそれを詰ったことはあった?! ないでしょおおおぉッ?!
男に逃げられて酔い潰れたいその次の日があんたの授業参観ッ!! 泣き腫らした目を厚化粧で誤魔化して、あんたが的外れな発言をしてクラス中から失笑されてた時の私の気持ちなんて、あんたどころか、世界中の誰にもわからないでしょうよッ!! あんたが嫌い、大ッ嫌い…!!!
そしてこれまでにあんたを本当に愛したことなんて、ただの一度もないッ!!!
うおああああああぁああああああああぁおおおあああああぁあああぁああああああああああぁあぁあぁぁぁぁああぁッ!!!」
・………………わかってた。わかってたさ。……薄々は。いや、違う。……最初っから知ってたんだ。だから私は……、……魔法なんて虚しいって、わかってたんじゃないか……。
「……何が煉獄の七姉妹よ…。……下らない、下らない…。…………私、最初っから知ってたんだから……。」
・役立たずが役立たずが……!! あんたなんて大嫌いッ!! 消えてしまえ…!! あんたなんて所詮、私の中の妄想じゃない…!!!
・「死になさいよ、使えない家具ッ! どうして生きてるの、あんたたち? 生きてる価値がないのに、何で生きてるわけ? 死ねばいいじゃん。死になさいよ。というかむしろ死ねッ!! 使い道のない家具を置いとく馬鹿がいると思うッ?!」
・「……なぁに、マモン。あなただけは私の命令を遂行してくれるの? そうよね。私の一番のお友達だもんね。…………あなただけは、やってくれるわよね。こいつらを!」
「…………い、今の縁寿さまには、……私たちを使役しても、人殺しは出来ません!! 主に出来ることを手伝うのが家具の役目…!主にすら出来ないことを、私たちにはすることが出来ない…!! 縁寿さまはこいつらが憎いですか? 憎いですよね? 殺したくなる気持ち、よくわかりますッ!! えぇ、どうぞ、ならば殺しましょうよ、縁寿さま!縁寿さま自らがその手を血に染めるならば、我ら煉獄の七姉妹、どこまでもお供しましょうとも!どこまでもッ!!」
「……私に、……出来ないから、………あんたたちに頼んでるんでしょう……。……私に出来ないことを出来るから、あんたたちは家具なんでしょお!!」
「えぇ、家具です。使われてこそ家具です…!! どうぞ我らを使って殺して下さい! 殺すのは貴女です、縁寿さまッ!!縁寿さまが殺したいというならどうぞご自由に! 躊躇うことはありません、どうぞ今すぐにそれを実行を!! そこまでの覚悟が伴って初めて! 自らの手を汚す覚悟があって初めて、我らはそれをお手伝いいたしましょう! でも縁寿さまはそれに至っていないんです!!」
「ふっ、………くっくっくっく、あっはっはっはっはっは…。あっはっはっはっはっはっはっは、語るな家具が。妄想がッ!! もうわかってるわよ、皆まで言わせないでよ。…あんたたちには何も出来ない。あんたたちは所詮、私の妄想、幻想、白昼夢…! 私には初めから友達なんて一人もいないわ。孤独な私が心の中に生み出した、お友達ごっこの幻影でしょう? 知ってたのよ、最初ッから!!!」
「あっはははははははははははッ!! えぇ、そうですよゥ! 縁寿さまの頭の中の幻想ですけど何かァ? ハイ、そうですゥ! 私たちは友達のただ一人もいやしない、寂しい寂しい縁寿さまの心を慰めるためだけに生み出されたお友達ごっこの脳内妄想ですが何かァ?
見たければ現実を見るといい、私たちなんか見ないで、あそこで囲まれて罵声を浴びせられてるあなたに戻るといい!!
ほらほら戻りなさいよ、お帰りなさいな現実にッ!! 都合のいい時だけ私たちを呼び出してお友達ごっこで、自分の手を汚す覚悟もないくせにそれをけしかけ、駄目とわかったら否定して消し去る! えぇ、どうぞお楽しみ下さいよ、縁寿さまが期待されるような苦悶の声と悲鳴をあげて退場しますとも!! 縁寿さまがたった今、浴びせられている罵声を、私たちにも同じように浴びせ掛けて胸の内をスゥっとさせるがいいです。
それもまた家具の役目!! ムカついて床に叩き付けられることもまた、椅子の大事なお役目ですからァ!! その程度のことで主の不機嫌を一時でも受け止められたなら、家具としてこれほどの栄誉はありません。
殺しなさいよッ、否定しなさいよ、あなたの最初で最後の友達をぉおおおッ…!!!」
マモンは最後に、嘲り笑いの表情を浮かべたけれど、……なぜか涙の粒を散らしたように見えた。
マモンと、ベルゼブブとアスモデウスの3人は砕け散り、床に転げた……。
・私は白昼夢の世界に入り浸り、クラスから疎遠であろうとしたことを認める。……それを認めることによって、あれだけ頼もしい言葉や優しい言葉を掛けてくれたのに、この、本当に助けて欲しい今になって、何も助けてくれなかった彼女らを穢すために、決別するために、……それを、認める。
「……私、右代宮縁寿は、協調性がなくて、クラスメートに迷惑を掛けました。それは、勉強が出来ないため、クラスメート全体に対し、過度の劣等感を持っていたからに他なりません。私は、…………………………。…………生きてても仕方ありません。」
そこからは、彼女らが書けと言った文章にはない。……私の、即興。そして、胸の内。彼女らも、それが予定されていないものであることに気付くが、眉をひそめながらも、口出しはしなかった。だから私は続ける。
「……そうです。私は生きてても仕方がなかった。……1986年のあの日に、私も連れて行ってもらうはずだったんです。……なのに、私だけが連れて行ってもらえなかった。……どうして、私はここにいるのでしょう。…ここは、…私のいる世界じゃない。…………誰も助けてくれません。…一時、……私の中に生まれた架空の友人たちだけが、私を助けてくれるような気がしていました。でも、友人たちは所詮は妄想で、……助けてなどくれなかった。だってここは妄想の世界じゃなくて、現実の世界だから。………だからつまり、……私は今日までずっと、……白昼夢を見続けてきたわけです。…現実のクラスメートを嫌い、妄想の友人たちとの交流の中だけに生きた。………その友人たちとは、さっき決別しました。だから私がここにいます。…………家族もいません。友人も捨てました。……もう私には、何も残っていません。……どうして死なないの? さっきそう聞いた人がいました。…その通りだと思います。どうして私は、………生きてるんでしょう。………………1986年に私は、…………死んでいるはずだったんです。…いえ、きっと死んだんです。なのに、…………私の殺された魂は、未だにこの肉の檻に閉じ込められている。だから、誰かに求めよう。それに誰も応えてくれないなら、……自分でしよう。
「誰か私を、…………………死なせて下さい。」
・「駄目だな、全然駄目だぜ。……死に掛けの老いぼれが、俺と本気? 寝言は棺に入ってから言いやがれ。そこにいる、ジジィに言っとけ。次期当主は俺だ。その最初の仕事は、てめぇの面に鉄拳ブチ込んでやることだってな…!」
・「大いに上等だそうよ。……いい、戦人くん。手加減は不要よ。………あなたは留弗夫さんの息子。……いいえ、私の息子よ。誰に自慢しても恥ずかしくないところを、私にも見せて頂戴。………あなたに全てを託すわ……。」
「了解だぜ、カーチャン。………後は任せておけ…!」
・「……ありがと。そしてさよなら、戦人くん。……あなたのこと、明日夢さんの息子だからと、冷たくしたこともあったの。……その日のことを、許して。」
「許すも何も、今は霧江さんが俺にとって、の母親だろうが!!」
・「………………そんなことはないよ。黄金郷は、……素晴らしいところだよ。」
「行ったことあるの」
「………ちょっぴりだけね。それすらも、ベアトリーチェさまの戯れだったのだろうけど。」
「……………どんなとこなの、そこ。」
「うん。………素晴らしいところだよ。…うまく説明できない。安らかな夢の中みたいな世界。」
「薔薇が咲き乱れてて、美しい蝶が舞ってるような、極楽みたいな感じ」
「……そういう具体的なイメージのところじゃないの。本当に、夢の中みたいなところなの。そこにいる時は、とても穏やかで安らかで、……いつまでも眠ってることを許されてる、まるで休日の早朝のお布団の中みたいな感じ。……カーテンの隙間から日が差してきて、そろそろ起きないと、と思うんだけど、今日は休日だから起きなくてもいいんだって気付いて、もう一回お布団の中に潜り込む時みたいな、そんな気持ちになれる場所。」
「僕なら損したと思うな。休日なのに勘違いして起き出すなんて、姉さんくらいだ。………それで」
「うん。そこにいた時はね、満たされてて、とても穏やかだった。でも、元の世界に戻ってくると、つい直前までそこにいたはずなのに、うまく思い出すことが出来ないの。ついさっきまで見ていた夢が思い出せないのに良く似てる。…でも、とっても穏やかで静かな世界だったことだけは覚えてるの。」
「………それだけ何だ、あいつが偉そうに言う黄金郷なんて、大したことないな。……何でも願いが叶う場所だと思ってたのに。」
「その通りだよ。何でも願いが叶う場所。………少し違うかもしれない。何も願わなくてもいい場所、が正解かもしれないね。……例えば嘉音くんが、寒くて上着が欲しいと願った時、上着をもらえればとても幸せなことだけど、そもそも温かい部屋にいられたなら、上着が欲しいなんて願う必要さえもないでしょ……黄金郷はそういうところなの。大抵の願いは、願う必要さえなくなる。全てから解放された、何もかもが穏やかな世界なの。与えられて幸せ、という概念さえも超越した、全てから解放された世界とでも言えばいいのかな。」
・『嘉音くんの、思い切りの、人生を生きて。……うぅん、ちょっと違う。嘉音くんの、じゃない。……本当の名前は未だに教えてもらえないけど。本当の嘉音くんの人生を、思い切り生きて。………そう伝えて。』
・「……大好きな人も、家族も親族もみんなみんな!!私が守る。私が当主なら、それは私の責務だッ!! お父さんは威張ってるだけじゃない。私や母さんを守ってた!!……右代宮家を引き継ぐ重圧ってヤツと、……何十年も戦ってたッ!! だからわかるぜ。……次期当主ってのは、軽くねぇんだよ。……だからさ。捨てられるんだよ。……自分の命くらい、簡単に賭けられちまうんだよッ!!」
・「父さんが次期当主の資格を失ったなら。順当に次の当主は私が継承するぜ。……右代宮家当主、右代宮朱志香ッ!! これ以上を好きにさせるほど腑抜けちゃいねぇぜッ!!」
・「ようやく追い詰めたぜ……? みんなを捕らえている場所はどこだ。クソジジィのいる場所はどこだ。洗いざらい喋ったら、そのヒゲを毟り取るだけで勘弁してやるぜ?」
「それは困ります。これでもセットに毎朝、1時間を掛けているのですから。」
「ギプスの世話になったら、それも出来ねえなッ?!」
「…………おっと。…………………ぐッ。」
・「……なるほど。これは確かに痛いですね。」
「最終勧告。泣いて詫びろ。」
「それは出来ませんね。キャラが崩れます。」
「なら、お前が崩れ落ちるといいぜ。釣瓶打ちだああああああぁあああッ!!!」
・「砕けないからってよ、殴るのを止めはしないぜ。………どんな硬い心にだって、言葉はわずかずつ響き、やがてはひびを入れることだって出来るんだ…! 私は信じてる!! この世に無駄な努力なんて存在しないってなッ!!
だから生きるんだろ、思いっきりッ!! 言葉だっていつか通じるなら、拳だって同じことだぜ…!! 私の辞書には、諦めるって文字は書いちゃいねえんだぜッ!!」
・ 私は馬鹿だからこんな生き方しか出来ないけど、それでもきっと、嘉音くんの人生に、新しい世界を教えてあげるくらいのことはいつか出来ると、……信じてる!
だからこんなところで挫けない…!!
絶対にお前を打ち倒しッ、みんなを救い出して見せる!!
・「……………………。……だからと言って、僕は座して、婚約者が殺されるのを待ちはしないよ。………僕が怖いのは、お祖父さまに紗音が殺されるかもしれないことに怯えることじゃない。
僕の婚約者に恐怖を味わわせたクソジジィを、君らが僕より先にブン殴っちまうことだけさ。」
・「……僕は今夜ここに。紗音を呼び出し、婚約の証である指輪を渡すつもりだった。………僕と紗音の婚約を祝福しない者も、きっと多いだろう。僕は彼女との婚約を宣言することで、親族全てを敵に回すと、覚悟していた。僕にはあるんだよ。この島に訪れたその時から、………いや、違う。………彼女に婚約したいと打ち明けたその時からね。」
「…………結婚さえ出来れば、他の何もかも犠牲に出来る、と……?」
「結婚とは。……自分は生涯、妻の味方であり続けるということだ。………僕にはその時点で。……彼女のために、世界の全てを敵に回す覚悟があるんだ。」
・「でさ。…………その殺害の順番だけど。僕が決めていいわけだよね。」
「どうぞご自由に、新しき六軒島の魔王陛下。あなたの御心の趣くままに…!」
「………とりあえずさ。その一番目が、君になるわけだけど、いいかな。」
「…………………………え?」
「右代宮家親族の全ての命さえも、……今や僕の財産だ。それに損害を出してくれた賠償。安くは済まないよ。……まさか、僕の両親に、夏妃伯母さん、留弗夫叔父さん、楼座叔母さん。そして源次さんの命を奪っておいて、この僕が見逃すと本気で思ってるのかい。」
・「人を愛するとは強さだ。……それを知ったから、僕は強くなれた。………"紗音、僕は君を愛している"。その言葉だけで、僕は何度でも立ち上がれるんだ。」
「紗音は地下牢よ?私に愛を語られても。」
「いいや。伝わった。……それが愛だからだ。紗音には今、僕の言葉が聞こえているよ。そうだと信じられることこそが、愛だ。」
・『紗音。君は家具なんかじゃない。……家具だったとしても、世界でただひとつの、僕だけの家具だ。生涯、僕と寄り添って欲しい。……僕には君が、永遠に必要だ。』
「………じょ、……譲治さま………………。」
「妬けるわ。口説きだけならウチの人を超えたわね。」
「わ、……若さですな。」
・「……………紗音は僕に愛と強さを教えてくれた。もし君が、僕の強さだけで紗音への愛を確かめようというのなら、……僕の愛を、教えよう。」
「くす、言うわね。……なぁるほど。何度も蹴り倒されて転がされ、それでも立ち上がるのが紗音からもらった強さだと。
なら、呆気なく殺されたあんたのお父さんとお母さんからは何をもらったの?………?」
・「母さんにもらったものはこの蹴りだ。」
「そして父さんにもらったのが、……忍耐力。」
「………君の暴力的意思表示は理解した。……また、婚約者と両親への名誉毀損も理解した。そして、それを撤回する気がないんだね……?」
「……こ、いつ……。」
「君の攻撃は、もう充分に理解したから。…………そろそろ、いいかな。反撃しても。」
「ほっ、ほざくな、坊やの分際で……!!」
・「忍耐とは、熱くならず、冷静に相手の出方を研究することだ。………何のために?決まってるじゃないか。わかるかい?」
「わ、わ、わかんないわよ……。」
「反撃して、きっちり借りを返し、二度とちょっかいを出したくないと思わせ、涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにしてそれを拭うのを忘れて額を地面に擦り付けて何度も謝りたくなるほどに完膚なきまでに完璧に徹ッ底的にッッ!!!……叩きのめすためだよ。」
・「……君は、王者の力として3つ目に暴力と言ったね。君はどうやらまだ、その暴力の意味を誤解しているようだ。……この場合の暴力とはね、短絡的に振るわれる乱暴のことを言うんじゃない。………敵対すれば、無傷では済まないという、抑止のことを指すんだよ。」
「君も言ったろ?暴力は統べる力だと。………暴力で相手を破壊してしまったら、統べられないじゃないか。
王者の暴力とはね、見せるだけなんだよ。破壊しない。……屈服させて、自らの財産とするんだからね。君に泡でも吹かれたら、みんなの捕らわれてる場所に案内させられないよ。」
・「私たちのリンクも結構イケるじゃない。紗音ちゃんたちには負けられないわ。」
「当然じゃないか、私たちは仲良し一族だからね。」
「二人掛かりならイケるわ!次ッ、右側のアイツ!」
「了解だ…!いい嫁さんじゃないか、留弗夫め、少し愚痴が多かったんじゃないか?」
「へー、後で聞かせてもらうわ。留弗夫さん、天国で青くなっても手遅れよ?」
・「何をやってるんですか…!! え? ご褒美が欲しいから一番乗りがしたい? 他の山羊にご褒美を奪われたくないから邪魔をし合っている? このお馬鹿山羊たちがぁあああーーー!!! 私が行きますから道を開けなさい!! 何?! 嫌ですって?! ワルギリアさまがご褒美を奪うつもりだ?! 何でスクラム組んでるんですか!! えぇい、キツイ狭い!! いつからここは山羊専用車両に?! うぎゅ~!! 今、お尻触った子、次の駅で降りなさぁ~~いッ!!!」
・「賢い子が近道を知っていました。偉い子ですね、一等賞ですよ。あとで手作りの鯖のカレー煮をご馳走してあげますよ。」
・「ほほほほ…。あなたが100%の力を発揮したとして、あなたの戦闘力はせいぜい6。対してこの子の戦闘力は1000。つまり、あなたが100人束になっても、絶対に勝てないということです。まぁ、確かに戦いには不確定要素もあります。その戦闘力に多少の倍率が掛かることも認めましょう。しかしそれでも、あなたがこの子を倒せる確率は、0.00001%というところでしょうか。おわかりかしら?あなたには万に一つの勝ち目もないということです。ほっほっほっほ…!」
「く、…くそ……。万一ということは、配当は一万倍ということではないかね。……良い大穴だ。そういう馬券は好きだよ、買いたくなる…。」
・ほっほっほっほ…。浅はかな。
お前たちの狙いは分かってますよ。
二人の距離は、10m以上は離れている。
山羊も蔵臼も、一撃で勝負を決めるために全力で踏み込めば、その威力は普段の2倍。
それが激突するのだから、相対的に4倍となる。
更に、奇跡的に急所に命中しクリティカルヒットとなったとしても、その威力は2倍止まり。
………つまり、蔵臼の最大戦闘力は6の8倍で48がせいぜいというところ。
そのまぐれ当たりの一撃を20回繰り返してようやく勝てるかどうかというところ。
ほっほほほほほ、一撃食らわす度にあなたは殺されて、それでもダメージを累積させて、……そうね、エピソード24くらいまで行ったらようやく勝てるのかしら?
ほっほっほっほ、そこまでこの連載、長引いていると良いのですけど…!! いずれにせよ、万に一つの勝ちもない!
……もう、さっきから何なのよ、このピンポン?
・山羊の爛々と光る瞳には、はっきりと蔵臼の顔面が捉えられている。
……どのタイミングまで踏み込み、どのタイミングで殴り抜き、吹き飛ばし、完全に勝利するか、そのビジョンが完全に見えていた。
山羊の脳裏に、今日までの辛く長かった日々が蘇る……。先輩たちにいびられながらの鍛錬の辛い日々…。そんな日々に、わずかに垣間見えた先輩たちの温かな気遣い。そして初めて実力を認められ、仲間として認めてもらえた日の喜び…!
ずっと親不孝だった。……そうさ、実は俺、今回の仕事を終えたら足を洗って、故郷に帰るつもりだったんだ。ごめんな、妹の山羊子、お兄ちゃん、迷惑ばかりかけてたな。それに俺、…じ、実は幼馴染がいて、帰ったら結婚することになってるっすーーー!!!
「ぎゃーーーッ!!!ダメぇえええぇえ!!負けフラグ立て過ぎちゃらめええぇええええぇえ!!そのパンチは駄目よ、避けてえええぇええ!!」
・「………蔵臼さんの戦闘力は6。」
「双方2倍の踏み込みで4倍。」
「ク、クリティカルヒットで8倍。」
「負けフラグの立て過ぎで160倍。」
「……そして、トリプルクロスカウンターでさらに12倍。」
「せ、……1920倍……。」
戦闘力、11520…!!
今の蔵臼のパンチなら、最初の頃の天下一武闘会なら余裕で優勝できる威力…!!!
・「……まだ大丈夫よ。かすったけど、また外したわ。……さすがに、………今度はもう、駄目かもね。………ありがと。そしてさよなら、戦人くん。……あなたのこと、明日夢さんの息子だからと、冷たくしたこともあったの。……その日のことを、許して。」
「許すも何も、今は霧江さんが俺にとって、の母親だろうが!!」
受話器の向こうで、凄い音が聞こえた気がした。
そして、ガラガラゴトゴトと賑やかな音。
……まるで受話器が落ちて転がったような。
「霧江さんッ?!?! 霧江さん!!! うおおおおおぉおおおおおおおおおぉ!!」
…………霧江さんは二度と、……電話には、………応えなかった………。
・「……………も、……もしもし……。」
「コングラッチュレーショーーンズッ!!アぁンド、アイムファィ~ン!!エーンドユぅううううぅッ?!あああぁッひゃっひゃっひゃっひゃああああぁッ!!!」
「誰ぇ…は、ないであろう、右代宮戦人ァぁあぁ…。返事は普通、イエ~ス、アイムファイン!であろぉ??懐かしいなぁ、中学でやっただろ?二人一組になってやるヤツゥ! うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃあああぁ!!!」
「英語で言えよォ。お前、そういうの得意だったろぉおぉおお?」
「当ててみろよォ、ハワイへご招待するぜぇ?あっひゃっひゃっっひゃああぁッ!!ぃやっとだ。やっとッ!!んんんん、長かったぜええぇええぇ、本ッ当ぉおおぉに今日まで長い日々だった…!! マジで千年は待ったぜ、今日という日をよおおぉおお??お陰様を持ちましてッ!私、大復活ッ!! サンキュー金蔵ォ!特別に、さっきの"待った"、聞いてやってもいいぜ~!!!」
「今日は最ッ高にご機嫌だから、大サービスだ!! おいおい金蔵、シャトー・ペトリュスなんか飾ってんなよォ! 1947年ものかよッ?! 今日開けなくていつ開けるつもりだ! それを浴びせっこして遊ぼうぜぇええぇ! 空き瓶で殴りっこもしよう!うっひゃっひゃっひゃ!!」
「金蔵だってぇええぇ!妾に再会出来て嬉しいだろぉおお? あぁ、シャバだ!現世だ!! 妾の肉体万歳ッ!!」
「……お前、……さっきから何を騒いでるんだ………。…お前が、……ベ、…ベアトリーチェだとでも言うのかよ…。」
「イ~エぇええええぇス、アイアぁああぁムッ!! 金蔵の13人殺しの儀式のお陰で、ようやく妾は復活したぞ…!! 口があるといい、舌があるといいッ! こうしてそなたと話せることの何と楽しいことかッ! そう言えば、お前とはあれだけ何度も何度も憎まれ口を叩き合ってきたのに、こうしてゲーム中に盤上で会話をしたのは初めてだなァ。
何やらとても新鮮だッ!!お、今のポンッって音、聞こえたか?! あいつ、開けたぞ、マジでシャトー・ペトリュスを開けやがった!!1本いくらするか知ってるか?! 10kgのインゴット丸々と同じくらいするんだぜぇえええぇ?!?!ひぃーっはっはっ はっはっは!!」
「なぁんだ、妾に会いたいのかァ? うっひひひ、モテる女は辛ぇやぁ! でもよ、金蔵がいる時に口説くのはよせよぉ?こいつ、マジで妬くから性質悪いぜー?………金蔵のいない二人きりの時なら、こっそり内緒で愛してやるからよ…? うひゃーっひゃっひゃっひゃっひゃ あーっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!!!」
「いいだろ~?! あいつさ、お前の若い時に似てるからさ、キュンと来ちゃうんだよぉ。
安心しろよ、浮気なんかしないってぇえぇ。あいつと二人きりになるのは今だけ。……ベッドの中ではいつだってお前と二人きりだろぉぉ…? だがもうベッドに首輪で縛るのは勘弁しろよ?くっひゃっはっはははははは…!!!」
「というわけだ、戦人ァ!そなたのテストは妾、黄金の魔女、ベアトリーチェが自ら執り行ってやろう! 場所は、そうだな。この屋敷の正面玄関にてだ! 戦人ぁ、次期当主のテスト、マジで頑張ってくれよぉ?……どうせ金蔵なんてすぐに寿命でポックリ逝っちまう。戦人が次期当主になってくれりゃ、お前がこの島の全ての新しい主だ。……お前になら、……妾を独り占めにさせてもいいんだぜ……? 金蔵がしたみたいに、……妾を支配しておくれよォ……?くっひひひひひひひひ、うっひゃっはっははははははは!」
・「そんなに妾のすぐ隣に来たいのかぁ? いいぞ、そなたがテストに見事合格できたら、謁見を許そうではないか。合格ということはそなたこそが次期当主、そして妾の次なる主。……妾の肉体も魂も、どう扱おうとそなたの自由よ。妾は所詮は、右代宮家の家具なのだから! あっはっはっはっはっは!!」
・「それは怖い怖い…。だが暴力に支配されるのも嫌いではないぞぉ? 妾の頭をこう、鷲掴みにして! 苦痛に表情を歪めさせ、鷹がその爪で獲物を引き裂き、掻き毟るように妾を蹂躙してくれよ…!!
あぁ、若き日の金蔵を、もう一度思い出させておくれ…!! 妾にこの千年の生涯でただ一度! 支配され屈服し家具に落ちる悦びを教えてくれたあの日のことを思い出させてくれよぉおおおおおぉ!!うひゃーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
・「そいつぁ丁度いいや。愛してるぜ、ベアトリーチェ。お前の名前をここに突っ込んでやる。だから俺が選ぶ選択肢は二番だ。これでいいか?」
「おいおい、茶化すな茶化すな。なぁ頼むよ戦人。お前の想い人の名を妾に教えてくれよぉ。じゃないとテストにならぬではないか。」
「悪ぃな。俺に特定の女はいねぇぜ。仮に居たって、誰がお前なんぞに話すもんか。」
「そういうことでは、このテストはそなたに成立せぬ。ふぅむ、残念残念。そなたの想い人がどのような女か、好みくらいは気になったのだがな! くっくくく!」
「………俺が黒髪長髪のロリ貧乳がいいって言ったら、どうするよ。お前とはひとつも一致しねぇぜ?」
「嘘を吐け、このおっぱいソムリエがー! 金髪のボインボインがいいんだろぉ? 妾がまさに理想の体現ではないか、くっくっくっく!」
「お前のバストを当てるのが次期当主のテストだってんなら、喜んで挑戦してやるぜ。」
・「ふははははははは、わあっはっはははははははははッ!! 何を迷うか、愚かなる孫たちよ、我が末裔たちよッ!! 即答できる簡単な問題ではないか。朝のトーストに、バターを塗るかジャムを塗るかより迷わぬ選択であるというのに!!……お前たちには正しい答えがわかるか?」
「い、いいえいいえッ、申し訳ございません、私にはわかりません、ゴールドスミス卿!」
「愚か者めッ、選べもせぬとはな、ゲームオーバーああぁあッ!!! 自らの生きる理由も目的も見出せん愚かなうさぎめッ…!! 貴様など誰にも気付かれずに踏み潰されて生を終えるアリ1匹ほどの価値もないわ!! 死ね!潰れろ!! 私が瞬きしている間に消えてなくなれッ!!……お前はどうか。」
「……私は1番の、"自分の命"を生贄とするであります。武具は戦い、散ってこそであります。そして武具は、敵を打ち滅ぼし、味方を守るためにある。愛する者たちを守って死ねるなら本望であります。」
「ほお。武具らしい実に見事な模範解答よ。即答、大いに結構。……そう答えればニンジンが1本余計にもらえると教えられてきたのか? ふっふふふふ違うよなぁああぁ? それすらも違うよなぁあああぁあ…? そう聞かれたらそう答えよと、お前はただ吹き込まれた通りに答えたに過ぎなぁあい!! お前も今のうさぎと同じだ。自分の生きる理由と目的を、未だに見出せずに生きている…!! 生きる価値なきクズめッ…! 貴様など潰されて他の家畜の餌にでもなるのがお似合いよッ!!」
「……………ッ。…はっ!か、家畜の餌、光栄であります……!」
「違うだろぉおおおぉ? もう誰も死ぬところを見たくないんだろぉおお? それがなぜ認められぬのか。認めろよ、お前の古傷の奥の奥が未だに膿んで腐っていることを…! あぁ、腐臭にて鼻が曲がりそうであるわ、愚かなる腐れうさぎめッ!! お前にはこれが褒め言葉であるッ!!」
「………あ、ありがとうございます、であります……。」
「さぁて、最後のお前はどうか。この三択から何を選ぶ…?」
「にひ。迷うことなく当然、2番であります。」
「ほぉ…。2番か。"愛する者"を生贄に捧げることを胸を張って選べる者は多くない。訳を聞かせよ。」
「愛する者は、いつかいなくなるからです。愛する者がいなければ、傷つかないし、いなくてもいつか、また誰かを愛せるかもしれない。だから。今、愛してる者なんて、大した価値はないのですにぇ。……にひ!」
「くっくくくくくく。なるほど、それでそういう回答になるわけか、愛に傷ついたがゆえに臆病になったうさぎよ……。うさぎは寂しさで死ぬと聞いたが、お前の心は一体いつ殺されたというのか…? ならばうさぎよ、問いを変えよう。2番の選択肢を、"愛する者"ではなく、"そなたが愛した者の思い出"に変えようではないか。……どうか。これでももう一度選べるかぁ? 何が愛してる者に大した価値はないだ、愚かなうさぎよ…!自らの愛の深さにも向かい合えぬクズめッ!!選んでみよッ、愛した者を忘れられると、選んでみよぉおおおおおッ!! 選べるだろ?選べるものなぁあああぁ? ほおおら選べるって言ってみろよおおぉおおおおッ?!?!」
「え、…え、選べるであります…。選べるであります…!!にひ、………にひひひひひひひひひいひぃ……。」
「ゴ、ゴールドスミス卿…!それくらいでどうかお許しを……!!」
「ひひぃひぃ…。……ひぃいいいいぃいいぃん…!!」
「もう良いわッ、クズうさぎどもめッ!!お前たちはワルギリアのところへ行き、地下牢の見張りを手伝うのだ。消えよ!!」
・「ワルギリアさまぁああぁあぁっ!ひいいぃいいいぃん!!」
「ひどいんですひどいんです、ゴールドスミス卿がひどいんですぅうぅ、うわあぁああん!」
「私だって……、がんばってるのであります……。潰して家畜の餌とか、あんまりであります。……ううううううううぅうぅ!!」
・「も、申し訳ありませんであります…!!私たち全員、バージョンが違ってて…。」
「何でバージョン変わる度に、ショートカットとプルダウンがしっちゃかめっちゃかになるにぇ…!前回、不正な終了がありました?管理者権限??何これワケわかんないいいい!!」
「うきゅ~~!!うきゅ~~!!(早く直して~!! わぁん!)」
「近衛隊トラブルシュートにコール!何?ユーザーコードがないと教えないッ?!」
「ユーザーコードは45が管理してるにぇ。」
「うきゅー!!うっ、きゅっ、きゅっ、きょ、うきゅっ、きゅー!!!」
「きゅ、9999にしか聞こえん……。紙に書かせろ。」
「IME再インスコ出来ないから文字も書けないにぇ。」
・「………これだから東京人は。名乗らせなければ相手の格もわからない…?」
・「……下がれ下賎が。私はお前たちの社長に呼ばれて来たんだよ。小此木鉄郎を呼んでおいで。呼びつけておいて出迎えもないとはね、これだから東京人は…。」
・「……東京まで呼びつけて、何てザマなの? 逃がしたわね。」
「逃げられた、と言ってもらいたいですなぁ。これでもずいぶん足止めはしたんです。さすがに気取られましてね。須磨寺さんが、時間通りに来てくれれば問題はなかったのですが。これだから地方人はルーズで困るんです。わっはははははははは!」
「…………今何と……? この私に何と…?」
・「あんたの母親のせいで、私の人生はめちゃめちゃにされたわ。……いいえ、一度殺されたと言ってもいい。あの日に私は一度殺されて、地獄のような日々に突き落とされたのよ…。」
・「私の人生も、生活も、生き方も、……何もかもを奪われたわ。………事情を知らない親類からは、姉さんの不名誉を理由にどれだけ蔑まれたことか…。……呪ったわ。あなたのお母さんを血を吐くほどに呪ったわよ…。」
・「……姉さんを、右代宮グループのパーティで見かけたわ。……あいつ、旦那と一緒で、………とても幸せそうに、……笑ってやがったわ。……私に、……全部を押し付けて、……自分だけ、………幸せに………。」
・「あんた、さっき言ったわねぇ…。私の人生はいつ始まるの?って。………いくら恨んでも八つ当たりしても、時間を巻き戻すことなんて出来ない。……じゃあ私は死ぬまでこうして、死んでもなお姉さんを恨み続けて?冗談じゃないわ。……いつまで私は姉さんの亡霊に苛まれてなきゃならないのよ。だから考えたのよ。…………これを成し遂げたら、全ての恨みを忘れて、やり直せるってね。」
・「ほら、須磨寺霞、見て御覧なさい? かつてのあんたがそこにいるわぁ。……気分が晴れるでしょう? かつてそこにいたあなたが、今度はこっち側にいるのよ? うふふふ、愉快でしょう? 立場が逆になるのは!」
「……………えぇ、本当に、………愉快だわ………。あっははははは、何でそんな顔が出来るのよ、縁寿…! 泣きなさいよ、泣きたいんでしょう?!」
「きゃっははははははは!! そうそう、泣きたいに決まってる! 泣かせちゃいなさいって。あの時のあんたは泣かされちゃったじゃない。だからこいつも泣かせてやりなさいよ。くすくす、縁寿もいいのよ? 泣いちゃえばぁあぁ?! きゃーっはっはっはっはっは!!」
「…あは、…あははははははは!! 泣きなさいよ、縁寿ぇ!あんたの泣き顔が見たいのよ! 泣いて、ごめんなさい霞叔母さんって言ってごらんなさいよ…!!」
「そう、その言葉を言わせるのよ。……あの言葉、辛いでしょ?自分のせいじゃないことを謝らせられるのって、……本当に辛かったでしょう……? 同じ思いをさせてやるのよ…。そうすることで、あなたの痛みは和らげることが出来るの。……うっふふふ、そうよ、それでいいのよ。もっと自分に素直になりなさい?もっともっといっぱいに、自分の感情を吐き出しちゃえばぁあああぁあ?!」
・「う、……右代宮縁寿ぇえええぇええぇッ!!あんたを憎まなくちゃ、……私は生きてられないの!!うっふふふっはっはははははははははははッ!!」
・「ひい、ひい…!! 殺してやる…、殺してやる…ッ!! あんたを殺さなきゃ、私の人生は報われないのよ……!!」
・「ひぃ、……ひぃいいい……!!わ、………私はね、……!! あんたの母親が逃げたせいで、………あんたの母親の許婚と、身代わりに結婚させられたのよッ…!!将来を誓い合った男がいたのよ?! 別れさせられたのよ?! あんたの母親の代わりに嫁がされて、……話もろくにしたことがない男に抱かれた私の気持ちがわかるってのッ?!?!
殺してやりたかった!! なのに姉さんは勝手に死んだわ! だからあんたを殺すの!! そうでなきゃ、私の棘まみれの人生は、終わらないのよぉおおおおぉ!!」
・さぁ、行こう。
………私という駒の、いよいよ本当の出番。
ごめんね、ベアトリーチェ。
あんたにお兄ちゃんは、譲れないのッ…!!!
・「馬鹿なこと言ってんじゃないわッ!あんたは他の誰でもない、右代宮戦人よ! 誰が認めようと否定しようと、あなたがそれを信じなさい…!! あなたの世界はね、あなただけが作れるのよ。あなたが右代宮戦人である世界を、失わないで!」
・「しっかりなさいッ!あんたは右代宮戦人! 確かに明日夢お母さんがあなたを生んだわけではないかもしれない。でも、だから何?! あなたにとって母親であることに、何も変わりはないでしょう?!
………例えば、あなたにとって右代宮縁寿は何? 血は繋がってないかもしれないけど、それでも妹でしょ?! 血じゃないでしょ、絆でしょうッ?!」
・「どういう事情で、明日夢お母さんがあなたの生みのお母さんじゃないかはわからない。でも、あなたは今日まで、そして今でも母親だと信じてるでしょう?! 世の中にはね、母親さえ、……家族さえいない人だって大勢いるのよッ!!
明日夢お母さんはあなたを寂しがらせたことがある? ないでしょ?! あなたの平和だった家族を簡単に捨て去らないでッ!! あんたは6年も家族のもとから離れてたから家族の絆が希薄すぎるのよ!!
もっともっと、家族の絆を強く感じて! 思い出して!! 明日夢お母さんのためにも、こんな下らない魔女の妄言で、愛情を失わないでッ!」
・「………………………。………そうさ……。……お袋は、……いつだって俺の味方だったんだ……。……………ここはどこだよ……? ……暗ぇよ……、……帰りてぇよ……。俺の家族は、みんなは、……どこなんだよ………。」
・「お家であなたの妹が帰りを待ってるわ。せめてあなただけでも帰ってあげないと、……彼女はいつまでも独りぼっち…! 妹のためにも、どうか魔女のゲームに勝って…!!」
・「…………縁寿……、俺の、……妹………。……でもよ、………わからねぇんだ…。………どうして、俺はベアトと、こんなわけのわかんねぇ、残酷なゲームを永遠に繰り返さなきゃならねぇんだ……? ………もう、……嫌だ………。」
・「なら、早くこんなゲームに決着をつけて、お家へ帰りなさいッ!! 右代宮戦人、いつまでこんなところで遊んでいるのッ?! 妹が帰りを待ってるわよッ!!!」
・「………そうだ……。……帰りたい……、……親父やお袋、……縁寿のところに帰りたい……。………もう嫌だ、……ここは嫌だ……。……もう魔女は嫌だ、ゲームも殺人も嫌だ……、……嫌だ、嫌だ……。」
・「もう嫌でしょう?! なら、家族のもとへ帰るためにも戦って!! ベアトリーチェを打ち破って、帰ってきて!!」
・「嫌だ、……もう魔女は嫌だ…! ベアトも嫌だ、…どいつもこいつも嫌だ、お前も嫌だ、お前だってどうせきっと、魔女の仲間だ…。いつまた裏切るかもわからない…!!
何も信用できない、赤くない言葉は何も信用できない…!!
俺に構うな、構うなぁあああぁあああぁ!!」
・「早く帰ってきて、お兄ちゃんッ!!私を独りぼっちにしないでッ!!! 」
・「……………え、……。………お前、………、……誰……。」
・「私よ、縁寿よ…!! お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、誰も帰ってこないッ!!寂しいよ!! お願いだからッ、早く帰ってきてッ!」
・「……え、………縁寿……。………お前、………縁寿だったのか…………。」
・「そうよ、縁寿よ!! 誰も帰って来ない世界の右代宮縁寿…!! ………私の家族は全て、あの日の六軒島から帰って来ない…!!
目の前のあの魔女が、家族を全て、お兄ちゃんさえも奪い取ってしまった…! ………お兄ちゃんだけが、あいつをやっつけられる!!あいつをやっつけて…!!
そして、家族を取り戻して!!そして、………私のところに帰ってきて……!!!」
・……辛かったよ………。
お兄ちゃんが目の前にいるのに、……それを口に出来ないなんて………。
このルールさえ守れば、……ずっと永遠にお兄ちゃんの側にいられるはずだった。
………お兄ちゃんと一緒に、…魔女と戦うゲームを、……永遠に遊べるはずだった……。
・「でも、………それじゃ駄目。…………お兄、……ッ、………ちゃんは、……帰らなきゃ。………お家で、……あなたの妹が待っているもの……。………それは私のことではないけれど、…………それで、あなたの妹は、…救われる…………。」
・右代宮縁寿の声を届けるために、生み出された存在。
それが私、エンジェ・ベアトリーチェ…!!
私という駒を生贄に、お兄ちゃんに戦う意思を、目的を!
私の目的はお兄ちゃんと永遠に魔女のゲームで遊ぶことじゃない!
私は右代宮縁寿の嘆きと悲しみを、あなたに届けに来たッ! それこそが私の揺ぎ無い目的!
・「…私は………、…もう消えちゃうけれど……。……お兄ちゃんは、がんばって戦って、………きっと、私のところへ………帰ってきてね………。…………待ってるよ、…………ずっと……………。……お兄ちゃんをもっといっぱい、手助けしてあげるつもりだったのに、……何も出来なかった。……ごめんね…………………。」
「い、いいんだ……!! お前は俺に、……教えてくれたじゃねぇか……! どうして俺が、勝たなくちゃならないか…! そして俺が、…絶対に勝って、お前のところに帰ってやらなくちゃ、って……!!
俺は、………何をこんなところでぼんやりと遊んでいたんだ……!! あぁ、もうこんなところで遊んでなんかいないぞ…!! 帰るからな、帰るからな!! お土産持って、きっと帰るからなッ、約束する……!!!」
・「……この手を、今から離すね……。痛かったでしょ……? ぎゅっとしてて、………ごめんね………。………私は大丈夫だから、……振り返らなくていいから…。 ………だから最後にお兄ちゃんの、……一番かっこいいところを、……見せて………。……席を立って、……目の前の魔女を指差して、……ゲームの再開を宣言して………。」
・「………俺は勝つ。どれほどの時間を掛けようとも、絶対にお前を打ち破る…!! この勝負にもう妥協も中断も不戦敗もないッ!! 俺は逃げない! 逃がさない!!
俺を本気で倒しに来いよ…!! 下らない騙しも誤魔化しも、おかしな交流も馴れ合いも一切必要ないッ!! お前と俺は敵同士…!!! 一秒でも早く決着をつけて、………俺は縁寿のところへ家族を連れ帰らなきゃならないッ!!!」
・……揺るぎ無き決意。
…絶対の意思。
ニンゲンの絶対なる意思は絶対の魔力となる。
……それは奇跡に通じ、それを約束する。
そう、これは、約束された、(絶対の奇跡・・・・・)。
………………妾の勝ちは百億にひとつも、
いや………、(ひとカケラの奇跡も絶対になく・・・・・・・・・・・・・・)、
ありえぬということか。
妾の足にはいつの間にか、音もなく、もう片方の足にも冷たく頑丈な鎖が絡みつき、 この椅子に縛り付けている…。
…………妾に残されたる運命は、戦人に殺され敗北することか、 それを拒み、永遠に引き分けを繰り返すことのみ。
……いや、殺されるための心の整理がつくまで、引き分けを繰り返すの間違いか。
いずれにせよ、妾は。
………敗れるためだけに、戦わねばならぬ。
もう永遠の鎖は妾を縛り付けた。
そして戦人もまた、妾を逃さない。
……みっともなく許しを乞うか…
同情を乞うために、憐れみの心に訴えかけるか…
形振り構わず土下座して
鎖のせいでそれも叶わぬわ。
……チェックメイト。
これは完全なる詰めだ。
……………………………だが。
妾は、黄金の魔女、ベアトリーチェ。
黄金郷に君臨したる黄金の魔王。
敗れるための戦いであっても、妾には相応しき態度がある。
・「存分に来るがよいぞ、妥協も中断も不戦敗もない。 どちらかが勝ち、どちらかが滅ぶ。お前に負ける意思がないというなら、妾を倒すしかない、殺すしかない。
しかし、妾もむざむざと殺されはしない。 妾に相応しき最期をそなたが用意できるまで、抵抗を繰り返すことが出来る。そなたにそれが出来るか ……いや、出来るだろう。 必ず出来るさ。 来いよ、殺しに。
………………。…………………やりにくいか ならばいつもの調子で行こう。…………………。
ひゃっははッ!!殺されるかよ、せめて勝てなくても、お前に勝ちを譲らない程度の嫌がらせは出来るんだぜぇえええぇ! ほぉ、いい面構えだ!……くっくくくくっく、うっひゃっはははははははは、あーっきゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!!殺してみろッ、殺してみろよォ、右代宮戦人ァあああああああぁあああぁああああああぁあうおおおおおおおあああああああああぁああぁぁあっぁぁあぁぁッ!!!」
・大きなベッドの上は、色とりどりの可愛らしいジェリービーンズや、お弾きのようなチョコレートが散らばっていた。
プレゼントボックスの中から覗いているショートケーキにはフォークが刺さり、サイドテーブルには、様々な色のジュースの入ったデカンターが並んでいる。
しかし、コップの中に注がれている飲みかけのジュースの色は、その何れでもなく、毒々しい。
色々混ぜて遊んだのだろう。
味はともかく、それはとても楽しいこと。
ふかふかのベッドの上には、カラフルで大きな夢いっぱいのクッションもたくさんある。
その、まるで子どもの夢の国のような大きなベッドの上に、ベルンカステルはうつ伏せになって、ラムダデルタは仰向けになってクッションを抱きながら、くつろいでいた……。
・「ベルンに次に罰ゲームを出来る時はこうしようって決めてるのがあるの。聞きたい聞きたい」
「いやよ。」
「も~~、聞いてよぅ☆ あのねあのね ベルンを、素敵な素敵なお城に閉じ込めてあげるの。そのお城は、真っ白な純白の城壁に囲まれていて、一辺は12km。高さは10mあるの。魔法とズルは禁止! とても飛び越せないわよね」
「14億4千万立米 ………話のオチが読めたからもういいわよ。」
「うふふふふ! そこをね、毎日一粒ずつの宝石で埋めていくの! それで城壁いっぱいに貯まるまでベルンを閉じ込めて、その宝石で埋め殺すの。素敵な、ロマンチックな罰ゲームでしょう」
「………………一辺を5倍にしていいから、高さを10分の1にしてくれたら、今から閉じ込めてもいいわよ。」
「ホント! 36億立米になるわよ! 罰ゲームが倍以上の期間になるわよ! あぁん、そんなにも長い間、虜になってくれるのね! ベルン大好き、愛してるゥ~♪」
「私、お人形遊びは上手なの。……ホント、上手に遊べるのよ 飽きずにひとつの玩具で何百年も遊べるのが自慢なの。」
「…………ある時は味方し、ある時は敵対し、永遠に弄び続ける。……可哀想にね。あの子はもう、私たちのお人形。」
「うっふふ、そういうことよ、あの子は私たちのお人形。私たち二人の望む末路しか用意されてない。つまり、私によって永遠に引き分けが繰り返されるか、ベルンによってベアトが敗北して滅ぼされるか、でしか終わらないと断言できる。…………うふふ、…ベアトが勝って終わるようなことは、」
「……………奇跡の魔女として宣言するわ。」
「なら私は、絶対の魔女として宣言するわ。」
「「ベアトは絶対に勝利できない。そして奇跡は絶対に起こらない。」」
最新の10件を表示しています。 コメントページを参照
| |