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EP1コミック版第一巻読者応募サービス

追加TIPS

コミック版『うみねこのなく頃に Episode1』(漫画:夏海ケイ、出版:スクウェア・エニックス)の第一巻が発売された際に、特製図書カードの読者応募サービスが行われました。
これはその図書カードとともに付属されていた竜騎士07書き下ろしの追加TIPSです。公開された時期は2008年11月上旬となります。

[編集]密室殺人はなぜ美しいのか

パズル的境地を究極まで極めた密室殺人は芸術の域にさえ達する。
その神々しさに探偵たちは感嘆するだろう。そしてその様を間近で見ること
が許される。これこそが密室殺人最大の愉悦。
勘のいい探偵たちは私の仕事を疑うだろうが、密室は完璧。私を関連付けるもの
は何も存在したりはない。

 

しかし言うに及ばず、密室殺人は非発覚殺人に劣る。
密室殺人は探偵が訪れ、挑む。自分にとって完璧な密室殺人であっても、探偵が自
分を超える天才であったなら、その完璧は解かれ、瓦解してしまうこともあるだろう。
だが、非発覚殺人は探偵は訪れない。誰も挑まないから、瓦解することはない。
…それは一見すると「殺人芸術」の最高峰に思える。

 

「殺人芸術」とは実によく言い得た言葉だと思う。
芸術は人に見せて評価を受け、初めてその域に達する。どのような優れた作品も、
批評を恐れて発表しないならば、その作品は断じて芸術ではないのである。

 

それが殺人芸術にも言えることならば。
事件の発覚は絶対であり、非発覚はもはや論外であることになる。

 

殺人は、発覚しなければならない。

 

にもかかわらず、誰もが不可能犯罪であると絶賛し、美しき密室に頭を悩ませる。
彼らには挑む権利があり、密室を瓦解させる可能性が与えられているにもか
かわらず、彼らは挫折する。それを私は間近で閲覧することが出来る。
そして彼らは口々に言うだろう。
「人間にこんな密室殺人は不可能だ。」、と。
その時こそ、私は人間以上の存在であると彼らによって認められる瞬間なのである。

 

私を魔女だと認めさせるのに必要な方法は、恐怖でなければ強要でもない。
それは「美しさ」「神々しさ」だけなのである。
殺人芸術の最高峰を極めた神々しき密室殺人に、心の底から屈した時にだけ、
彼らは私のことを魔女だと認めるのである。

 

だから私は殺人を美しく飾り、そしてそれを発覚させる。
殺人芸術によって、私を魔女だと認めさせる。

 

この殺人劇はまだ幕を開けたばかり。
読者諸兄は、おそらくこれから起こる殺人を、断じて魔女の犯罪とは認めないだろう。
絶対に人間の仕業だと決めてかかるだろう。

 

……くっくっくっく!
いやいや失敬みィんなそう言うんだよ!くっくくくくくく!
絶対に屈しないぞとか、絶対に推理してみせるぞとか。口々勇ましいことを言うんだよ。
妾は実に嬉しい、微笑ましい!そういう輩が転げまわって悶絶し、最後には自己
弁護を図り、口々に言い訳するのを聞くのが本当に楽しみなのだ…!

 

どうせどこかに隠し扉があるはずだとか、誰も知らないマスターキーの複製
があるんだとか。
挫けろよ。この殺人劇が「本格ミステリー」だなんて、妾は約束できねェぜ??
諦めろよ。この殺人劇は「どうせファンタジー」!
そなたの推理ごっこなど時間の無駄に過ぎぬわ!

 

それでもなお、妾を眼前にしてもなお、この殺人劇をミステリーだと言い張れ
る人間至上主義者よ、ようこそ我が宴へ!
この世に数多存在する全ての奇跡と人ならざる高貴な存在に敬意を示せず、全
てを人間とトリックで説明する人間至上主義者を妾は心より歓迎する!

 

そなたがいつ妾の靴を舐めることを誓うのか!
そう簡単に屈服されてもつまらない。最後の最後まで、ミステリーなる矮小
なものにしがみ付くそなたを、美しき殺人芸術の海で溺れ苦しませ、その挙句
の果てには妾の靴を舐めさせて見せようぞ!

 

ようこそ、我が宴へ。
黄金の魔女ベアトリーチェはそなたを歓迎する!

 

あぁ、ところでそなたは、好きな色はあるのか?
その色のドレスと靴でそなたを出迎えよう。

 

舐める靴の色を選ばせてやろうなんて、粋な計らいだとは思わんか?
くっくくくくくっひゃっひゃっははははははは…!!!