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第七話『Requiem of the golden witch』あらすじ(その1)



ここは、第七話『Requiem of the golden witch』の前半までのあらすじのページです。後半の舞台劇の開幕以降の出来事についてはこちら。下部のリンクからも飛べます。
前回:第六話『Dawn of the golden witch』あらすじ(その2)

時系列というよりは、本編記述順に近いです。(本編中で時刻が明示される箇所は限られており、前後することもある)考察の参考程度に!
は劇中赤文字、スカイブルーは劇中青文字、ピンクは重要と思われる事項の強調、コーンフラワーブルーはその他不確定事項などの強調として使っています。

[編集]EP7選択時メッセージ

Episode7
Requiem of the golden witch ~黄金の魔女のレクイエム~

おはようございます。
本日は、黄金の魔女とそのゲームの、葬儀の予定となっております。

ゲームの日々はもはや終了し、残るは懐かしき思い出のみ。
ここに無粋なる真実が明かされ、ゲームは死を、迎えるのです…。

難易度は、少しだけございます。

[編集]時系列

章題時刻
オープニング(章題なし)
ベアトリーチェ殺人事件1986年10月04日(土)13:00?
楼座の告白1986年10月04日(土)13:20?
右代宮金蔵1986年10月04日(土)13:40?
サロ共和国1944年
海から来た魔女1986年10月04(土)14:10?
ベアトリーチェの誕生1986年10月04日(土)14:30?
貴賓室の怪談1986年10月04日(土)14:50?
こいつが、犯人だ1986年10月04日(土)15:00?
新しき生活1976年第一章
初めての友人1976年第二章
虜になる日々1976年第三章
新しき日々1977~1979年(いずれか一年)第四章
新しき元素1980年第五章
試される日1980~1981年第六章
恋の芽、恋の根1982~1983年第七章
黄金郷への旅立ち1984年第八章
魔女の蘇る日1984年第九章
魔女幻想、散る1986年10月04日16:00?
Tea Party10月04日~10月05日10:00~26:00?
????


[編集]オープニング(章題なし)


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
オープニングムービー
メタ・礼拝堂誰かの黙考。

土は土に。灰は灰に、塵は塵に。幻は幻に。そして、夢は夢に。
しかし、彼女の最後に描いた美しい夢はもう永遠に消えることは無い。
さぁさ、思い浮かべてご覧なさい。それは温かき春の、やわらかき午後の日差しがそのまま陰ることを忘れたかのよう。それはとてもとても、素敵なことなのだから……。
―― あなたの最後の夢の立会人 プブリウス・ワルギリア・マロ
どこかの屋敷異端審問官 ある事件の容疑者達
ある屋敷で数人の異端審問官達が、そこに遣えるメイドの女を指してアリバイが成立しないのは貴女だけだと宣言する。メイドの女は何故自らの雇い主を殺さなければならないのかと憤慨するが、彼等はミステリーに動機は不要だと切り捨てる。
メタ・礼拝堂ベアトリーチェ バトラ ワルギリア
風音が木霊す。ワルギリアは棺の前で魔女式の祈祷をし終えると、場を戦人に譲る。彼の手には厳かな装丁の本が。それは彼女に唯一捧げる物語であり、ゲームや棋譜であり、あるいはカケラであった。棺の中で眠る彼女の“夢”が描かれている。戦人はそれを彼女の胸の上に置く。この物語は彼女と共に埋葬され、筆者である戦人と彼女以外に読むことが叶わない。
「猫箱に閉ざされた、唯一、不変、不可侵の、……永遠の物語。」
つまり否定できない、反論できない、汚せない。
「……二人だけの、唯一絶対の、真実。」
どこかの街ウィラード・H・ライト
男は駆ける。夕闇に捕われようとする美しい町並みには目もくれずにある屋敷を目指す。ホワイダニット・心を虚ろにしてはいけないと心中で叫ぶ男。
メタ・礼拝堂ベアトリーチェ バトラ ワルギリア
彼女の眠りは何人たりとも邪魔してはいけない。戦人は最後の言葉を心の中で捧げ、ワルギリアに後を頼み礼拝堂を出る。ワルギリアもそれに倣い、彼女の眠りの妨げにならないように姿を消した。
どこかの屋敷ウィル 異端審問官 ある事件の容疑者達
メイドの女の必死の抗弁を聞きつつ、動機は犯人を特定した後に搾り出せばいいと異端審問官・SSVDのリーダーはそう思いながら逮捕状を取り出し拘束しようとした瞬間、男が現れる。
彼等はうろたえ、男にこの事件の担当は既に貴方ではないと告げる。彼はそれを無視し、心を無碍にした推理は認めないと応えメイドの女を庇う。それでも彼女を拘束しようとする彼らに対し叫ぶ。
使用人が犯人であることを禁ずッ!! ……ヴァンダイン二十則、第十一則。
メイドの女が身分違いゆえ秘めていた逢瀬のように、人は誰しも自分だけの真実を持つ。しかし罪無き人間の罪無き真実は、たとえ神ですら暴く権利は無い。推理は心の真実を踏み躙る物でも無く。
男の名はウィラード・H・ライト。天界大法院第八管区内赦執行機関、SSVD主席異端審問官。通称魔術師狩りのライト。
  • BGM: liberatedliberater(ある屋敷での事件)/Rebirth(ウィラード・H・ライト)/霧のピトス(オープニングムービー●)


[編集]ベアトリーチェ殺人事件


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
1986年 六軒島
礼拝堂ウィル 金蔵 蔵臼 夏妃 理御 朱志香? 絵羽 秀吉 譲治? 留弗夫 霧江 楼座 真里亞? 南條? 源次 紗音? 嘉音 熊沢 郷田?
1986年10月4日。六軒島の礼拝堂では葬儀が行われている。ウィルは受付の嘉音に、弔いに来たのではなく待ち合わせに来たのだと言い、いぶかしむ彼に一通の封筒の差出人欄を見せる。
礼拝堂中では故人の遺族と思われる者達がいた。金蔵は嘆き、夏妃や源次はそれを支える。楼座は故人を、自分が殺したと繰り返していた。
これはベアトリーチェの葬儀。ウィルは会った事すらない彼女に花を手向ける。棺は黄金の薔薇で埋め尽くされている。そこに遺体の代わりに本が置かれていた。表紙には“愛するベアトリーチェへ。1986年10月5日”とあった。
右代宮の人々は、その男に関わりが無かった。蔵臼は初対面であるウィルに何者かを問う。対するウィルは、蔵臼達に会ったことは無いようだが、彼等を知っているようだった。が、蔵臼と同伴する人物に違和感を覚える。その人物は右代宮理御(りおん)と名乗り、蔵臼を父さんと呼ぶ。金髪で、中性的な外見をしていた。理御は、蔵臼夫婦の子供・朱志香を妹に持つ者として、最初からいるかのように受け入れられていた。
蔵臼達は客人を理御に任せ、彼等二人を残して礼拝堂内の控え室に去っていった。
何故この葬儀に訪れたのかを聞く理御。ウィルは自らを招いた魔女の名前を呼ぶ。
メタ・礼拝堂ベルン ウィル 理御
そこにベルンカステルが祭壇の黄金の薔薇を土足で踏みにじって現れる。理御は突然現れた少女に、何がなんだか分からずに呆然と立ち尽くす。そんなことはお構いなしに話すベルンとウィル。
現在の新しい“ライト”でなく、引退したウィルに送られた“物語”。それを送ったベルンは、事件を頼みたいと言う。
右代宮理御という人物は、過去のゲーム盤には登場しない。ベルンは理御を、魔女の駒ではなく正当な登場人物であると保障する。ただし、ベアトの猫箱よりもっと大きい猫箱で囲った世界で生まれ得る可能性を持つ駒だが。少し落ち着いた理御は自身を次期当主だと説明する。曰く、蔵臼は自分が二十歳になるまでの当主代行であり、二十歳になれば自分に金蔵より当主が受け継がれる。その証拠に、理御の指には片翼の鷲が刻まれた銀の指輪があった。それを、送られた物語(今までのゲーム盤)には無い物だと呟くウィル。
仕事を断るつもりで来た彼だが、ベルンはそれを却下。渋々事件担当を務める。
仕事とは、“ベアトリーチェを殺したのは誰か”というベルンのゲームに挑み、謎を暴くこと。敵や邪魔する者はいなく、理御という仲間も用意した。(ベルンとしては答え合わせがしたいのであって論戦は求めていないのだろう)
いわゆるベアトリーチェ殺人事件を、閉じ込められた礼拝堂の中で親族に聞き込みをして推理・そして犯人を特定する…というものらしいが、ウィルは死体のない棺を見てベルンに問いかける。
ヴァンダイン二十則、第七則。死体なき事件であることを禁ず。
悪魔の証明ね。棺にないだけじゃない?死体が存在しないことをあなたが証明できない限り、これはミステリーよ。
第一則。手掛かり全ての揃わぬ事件を禁ず。
安心なさい。全てはここに揃っている。
事件を引き受けたウィルは、話についていけない理御に現状を説明させる為に礼拝堂を出る。
ベルンカステルは第七のゲーム“Requiem of the golden witch”の開始を宣言する。
礼拝堂前ウィル 理御 嘉音
礼拝堂を出るため受付を通る。会釈をする嘉音に対し、理御も返そうとしたが、嘉音の名前を言いよどんでいた。
ウィルは礼拝堂を一歩出、扉を背にした状態で献花用の薔薇を投げると、その薔薇は礼拝堂のひさしを出るあたりで宙に止まり、やがてくすんだ塵とになってしまう。ここは今カケラから切り離され、出入りは不可能になった。魔女のゲームに付き合わない限り、ここからは出られない。
ベアトリーチェは金蔵の愛人であり、何十年も前に死んだが、“殺された”というのは二人も聞いたことがない。理御もそれ以上にベアトリーチェのことは知らない。聞き込みを開始する二人だった。
  • BGM: Loreley(礼拝堂に降る雨)/le4-octobre(右代宮理御●)/l&d-circulation(ベルンカステルの仕事依頼●)/reflection-call(閉じ込められた十数人●)/l&d-circulation(探偵達)

[編集]楼座の告白

場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條? 熊沢? 郷田?
控え室では親族一同が寛いでいた。子供達は軽食をつまみ、大人達は話しこんでいるようだった。金蔵や源次は別の部屋にいるため姿がない。
理御とウィルはベアトリーチェについて詳しく話を聞く為に親族達に聞き込みを始める。ウィルは過去のゲームを見ているため、まずはベアトに会ったことのある楼座に話を聞くことにした。
自分が連れ出したせいで彼女が死んだのなら、それは私が殺したこと。取り乱す彼女に対してウィルはそれは事故だと諭す。
若干落ち着いた楼座は当時のことを語りだす。
1967年。楼座は母親に酷く叱られ絶望し、森の中に入り彷徨った。そこで隠し屋敷・九羽鳥庵に辿り着き、ベアトリーチェに出会う。
肖像画にそっくりな彼女。そんな楼座の告白に霧江は、金蔵の出会ったベアトリーチェと同じ人物なのか疑問を持つ。そもそも年齢が違う。楼座の会ったベアト(以下、便宜上“九羽ベアト”と呼称)は二十歳前後。金蔵が出会ったベアトは、1967年にはそこそこ年齢を重ねている筈。秀吉は、生き写しの娘ではないかと考える。また、これは隠されたが故に弔えなかった二人のベアトの葬式だと理御は呟く。
その後半狂乱になりながらも、礼拝堂の裏のライオンの像になんとか辿り着き、屋敷に帰ることが出来た幼き楼座は、源次にそのことを打ち明ける。誰の耳にも入らなかったことから、源次が上手く処理したのだろう。
楼座の話すことはこれまで。ウィル達は次なる人物に話を聞くことにした。
メタ・礼拝堂ベルン ウィル 紗音
一人になりたくて礼拝堂に来たウィル。そこにベルンが現れ、観覧席への招待状・“観劇者権限”という力を授ける。あまり乗り気ではないながらも、それを受け取るウィル。
ベルンは姿を消すと、紗音が現れる(受付は嘉音と交代で行っている)。紗音は、右代宮理御という存在がいて、皆がそれを当たり前のように振舞っているのが不思議らしい。そしてここを礼拝堂だとは認識しているが、どうもどこかが違うと言う。ウィルは、ここはいくつかのカケラで継ぎ接ぎされた、まともではない世界らしいと応える。この1986年世界に金蔵が生きていることや、理御がいること等、ベルンが答え合わせのために用意した特設舞台なのだろう。
ウィルは魔女のことを問う。ベアトリーチェのことを森の魔女の話なら知っていると紗音は言う。これでベアトは三人になった。
①金蔵が出会った三十年以上前のベアトリーチェ。
②楼座が出会った九羽ベアト。
③怪談となっている、六軒島の夜の主・ベアトリーチェ(姉ベアト)。ヱリカの推理どおり、悪霊の設定と混ざってしまったもの。
ウィルは、紗音と嘉音二人の話が聞きたいと言う。紗音は、受付を私達のどちらか一人がやらなければとそれを拒む。金蔵の命令かと訊ねるが、
「私の、命令権者です。私は命令に、逆らえませン。……オ呼ビデ キマセン。ソレデモナ オ、ソレヲゴ希望デ スカ……?」
急に二人の間に緊張感が走る。二人とも表情や仕草が変わった様子はないが、空気が張り詰める。
「呼ばねぇなら、お前を“観劇”する。」
ウィルはそう言うと、右手をかざす。そこにはベルンから賜った力が光り始める。
「ドウシ テモト仰 ルノデシタ ラ、……特 別ニオ 呼ビス ルコ トモ出 来マ ス  ガ   ?」
礼拝堂ウィル 理御 紗音
沈黙の後、ウィルは何かを理解し諦める。そこに理御が来ると、奇妙な空気は既に緩んでいた。
聞きたかったことは得られた。それの役に立てて光栄だと言う紗音。
金蔵との話はつく。次は、老当主に話を聞く番だった。
  • BGM: le4-octobre(人物紹介)/rain(籠の中の魔女●)/透百合(楼座とベアトリーチェ)/くるり(観劇者権限)/l&d-circulation(紗音の違和感)/7-weights(紗音と嘉音●)/l&d-circulation(次なる証言者)/Voiceless(金蔵の最愛のベアトリーチェ)

[編集]右代宮金蔵


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
礼拝堂貴賓室ウィル 金蔵 理御 源次 熊沢
金蔵の前でウィルは九羽ベアトについて推理する。
九羽ベアトは(第三のゲームより)自分は何者なのかを考え、自分の名前がベアトリーチェということにも違和感を覚えていた。おそらく九羽ベアトは、金蔵と三十年前のベアトの娘。その娘が母親とそっくりに育ってしまうことで、金蔵は九羽ベアトを生まれ変わりだと信じ、自身の娘を愛してしまう。
そして彼はベアトを二度喪う。隠し子故葬式すら出来ず、未練を絶つことが出来なかった。そうして彼は狂人となり、オカルト趣味へと走っていったのだ。
そこに熊沢が現れ、全てを話す時が来たのではと告げる。九羽ベアトの乳母といってもいい存在の熊沢は、亡き彼女の思いを話す。
九羽ベアトは確かに父としての金蔵の愛情は受けた。しかし、自身に理解の出来ぬ愛を受けていたこともまた事実。熊沢はそれをあまり快く思っていないようだった。
今こそ真実を語る時。そういう一同に対し、金蔵は贖罪の機会を天より与えられたようだと呟き、ウィルと握手を求める。金蔵達には見えていないようだが、右手の観劇の力が光り、働く。
カケラ世界ウィル 金蔵 理御
かつての金蔵が現れる。彼は声や顔が戦人に似ていた。
観劇者権限にてこのようなことになったと理御に適当に説明するウィル。理御はとりあえず疑問を持たず話を聞くことにした。
多指症のせいで、沈みかかった右代宮家の当主に抜擢された金蔵。当時は長老達の操り人形として、当主もお飾りのものでしかなく辛いものだった。悪酒や薔薇弄り、洋書を読み漁る日々が二十年も続く。気付けば妻が出来、気付けば子供が産まれていた。意思もない日々は死んでいるも同じ。彼は生きる為、または死ぬ為に傀儡の自分を動かす糸を切る。
時は太平洋戦争真っ只中。死ぬ為に戦に自ら出た金蔵は、戦いの最前線でなく回天(人間魚雷)搭載潜水艦を有していた、当時は無人島の六軒島に送られた。もはや日本は潜水艦など持っていなかったのに、潜水艦基地がある。つまり無意味な場所であり、米軍の攻撃すら来ない場所で、彼はひたすら御国の為というもっともらしい死を待っていた。
  • BGM: witch_in_gold(cembalo)(生まれ変わりと忘れ形見)/my_dear(父と男女)/神秘の森(歪み続ける感情)/Haruka(最初のベアトリーチェ)/l&d-circulation(操り人形)/fall(灰色の日々●)/wingless(生きる決意)/l&d-circulation(六軒島秘匿基地)

[編集]サロ共和国


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
1944年 六軒島
六軒島金蔵 山本中尉 日本兵達 ベアトリーチェ イタリア兵達
そんなある日、金蔵は山本という中尉に呼び出される。英語と中国語を話せた金蔵は、山本の通訳を命じられた。
その日の夕方。岩窟潜水艦ドックにイタリア海軍の潜水艦がやってくる。降伏しなかったイタリア軍、サロ共和国のものだった。何らかの事故を起こし、船には塩素ガスが充満していたので乗組員は全員顔を青くして出てきた。金蔵は山本中尉の質問を英語で訳す。イタリア人に、英語が話せるも者は?と聞くと、金髪の髪、蒼色の瞳の美しい女性が出てきた。
『私、英語わかるわ。』
それが金蔵とベアトリーチェの初めての出会いであり、黄金伝説の始まりだった。

丘の上で話す金蔵とベアトリーチェ。彼女は自分をビーチェ(以下、便宜上ビーチェと呼称)と呼ぶよう頼む。両国の通訳である二人はもう友人だった。
礼拝堂貴賓室ウィル 金蔵 理御 源次 熊沢
屋敷と九羽鳥庵を結ぶ地下道はその当時からの名残で、金蔵は屋敷を立てる際その地下道を利用したのだった。また外界から見えないところにその基地はあった為、今も存在するそれを知る者はほとんどいない。
六軒島金蔵 山本中尉 日本兵達 ベアトリーチェ イタリア兵達
天候と国の都合で、彼らを本土に送る日が遠くなっている。もう二週間経ったがそれでも迎えの舟は来ない。
イタリア側の任務とは、大切な日まで“それ”をもって隠れているようにすること。
ビーチェも知らなかったが“それ”とは、10tの黄金だった。極力日本人に見せたくないようだったが、船がこれの重みでどんどん沈み浸水しているらしい。
理由も目的も定かではないが、これが後に言う黄金伝説である。
  • BGM: 薔薇(戦時中の無人島)/透百合(通訳を求められる金蔵)/bore-ral(入港●)/ballade-continuer("Welcome to Rokkenjima"●)/l&d-circulation(奇跡の島)/bore-ral(10tの黄金)

[編集]海から来た魔女


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
六軒島金蔵 山本中尉 日本兵達 ベアトリーチェ イタリア兵達
黄金についてどうするかを話す一同。出来ればあの黄金は日本にもイタリア共和国にも認知されたくないというのがイタリア側の言い分だった。彼らの潜水艦は航行不能。もう黄金は六軒島から動けない。ここに隠すしか方法はなく、その労力は少なくない。その労力と引き換えに、山本は黄金を四割要求する。もちろんイタリア側は怒りたつが、内部でも揉めに揉めた。その後時間が欲しいと残し、部屋に帰っていく。
彼等の意見は割れた。悩む一同に、一人が最終手段として、日本人を口封じしてはどうかという案を出す。
その時、狭い部屋に手榴弾が投げ込まれる。それは不発だったが、日本側は最初から“最終手段”を使い、有無を言わせず黄金を横領するつもりなのだった。
現状は最悪。黄金の番をしていた兵士達も襲撃され、しだいにあちこちで本能的な殺し合いが起きる。自分以外の影を見つけたら即弾を放つ。そうでもしなければ自分が殺されるから。
金蔵は丸腰で駆けて行く。その途中で何人もの死体を見つけ、目の前で同僚を打たれ、生きるために逃げていく。彼は待ち望んでいた筈の死を恐れていた。なぜならビーチェと会った時から彼は“生きて”いたからだ。まるで昔の自分から生まれ変わった感覚。彼は愛する者を守る為走っていった。
ビーチェは山本に腹を踏みつけられていた。金蔵は山本に拾った銃を向ける。いつの間にか、銃声は治まっていった。

最後に響いた銃声は、金蔵が山本を撃った音だった。この島にいた大人数は消え、たった二人が生き残る。
ビーチェは肋骨をいためていた。秘密基地だからと外部の交流を絶つよう叫んだ者はもういない。金蔵は彼女をボートで運び新島の医者に見せる決断をした。
ビーチェは全てを失い、喪った。
『お願い、金蔵。……迎えが来るまでの数日間でいいから。……私をさらって。』
黄金と共にやってきて、死人だった金蔵に魂を与えた魔女。ベアトリーチェ。
『君は、魔女だな。……黄金の魔女だ。』
『くす。えぇ、黄金の魔女よ。みんなと同じレシピで作ってるのに、私だけがパスタから消し炭を生み出す錬金術が使えるの。』
金蔵はその願いを半分だけ叶えることにした。彼は魔女をいつまでもさらう。
1986年 六軒島
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條 熊沢? 郷田?
南條は、金蔵がそこまで話したことに驚く。その当時の新島の医者とは南條のことだった。初対面の軍人に黄金のインゴット一つを治療費に渡され、内密に金髪の女性を治療するという胡散臭い話を頼まれたらしいが、後日お釣りはちゃんと払ったらしい。そんな義理堅い南條に金蔵は心を許したのか、今でも友好は深い。
ビーチェはしばらく診療所に匿われ、右代宮家の使いに引き取られていった。小田原の別荘に移されたらしい。その頃から愛人としてだが慎ましやかに暮らしていた二人の間にはやがて子供が授かる。しかし酷く難産だったためビーチェは亡くなってしまう。
金蔵は深く嘆き悲しむ。その後、黄金を有する六軒島を買い取りビーチェの娘・九羽ベアトを隠し屋敷に住まわせた。
金蔵は、人生の転機となった黄金に刻印された(双頭の鷲の刻印ミスだったらしい)片翼の鷲を家紋にした。ただ、外部に持ち出す際には鋳造源を突き止められぬ様に、自前で造った物を人前に出したという。
  • BGM: play(黄金の行方)/closed_my_heart(堕ち行く論争)/少女たちの魔女狩り(地獄の始まり)/喰那(原始的な本能)/goldenslaughterer(味方であり敵である上司)/月夜(六軒島に二人)/far(黄金の魔女との出会い)/fall(娘と黄金と)

[編集]ベアトリーチェの誕生


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條 熊沢? 郷田?
葬儀の段取りは既に終わっていた。
ベアトリーチェの殺人犯をつきとめること。それこそが葬儀ではないかとウィルは理御に投げかける。少なくとも今までに話に出てきたベアトは殺されてなどいない。しかし自分達が“殺された”ことを暴こうとしている。
ワトソン役とはいえ、下層の駒にしては察しがいいと理御を一応褒めるウィル。次は人間でなく魔女としての、1986年のベアトリーチェを知る真里亞に話を聞こうとする。
いとこ組は真里亞のカップの魔法の話に相槌を打っている所だったが、そこには戦人の姿が見えなかった。理御は戦人と仲が良いらしく、葬儀に欠席しているのを残念がっていた。ベルンによると、“手掛かりは全て揃っている”とのことだったので、駒の戦人は何も知らないのだろうとウィルは考える。
自分が入学した翌年に、いつも生徒会長となってしまい妹が浮き彫りになっていると当てつけ、次期当主サマと呼ぶ朱志香に対して尻を抓る理御。ウィルは一人っ子であった彼女と理御がじゃれ合うのを見て少しだけ違和感を感じる。ちなみに彼女は兄弟がいようがいまいがああいう性格らしい。それはそれで仲睦まじそうだった。

ウィルと譲治と真里亞は互いに自己紹介をし、ベアトの話を聞かせてほしいと頼む。譲治に話を譲られた真里亞は、喜びながらウィルと握手をする。観劇の力が働いたようだった。
カケラ世界ウィル マリア
真里亞の父親は、“ない”。昔一度だけ楼座に写真を見せてもらったらしいが、成長してから訊ねるとそんな男はいないと返された。真里亞は聖書の一説を挙げ、処女懐胎だとしても、聖母“マリア”は子供を産み出せたと言う。父親は言うなれば聖霊。
当時彼女は他人とは違う境遇に置かれ、自分はニンゲンより未熟なのかと考えていた。そんな時教育の一環として神父が彼女等のもとに訪れ、神は全能だと説いた。
そんな神父に真里亞は自らの境遇を話し、それはおかしいことなのかと問う。そして前述した聖書のお話を聞き、自分は聖霊の子なのかもしれないと彼女は思う。
ベアトは宇宙を産み出せる最少人数は二人だと言う。これは父母だと解釈していた彼女は、ベアトはニンゲンの子供だから一人では世界を作れないと考える。それに対し、“神は我と共にある”。真里亞は一人でも聖霊と世界を作り出せると豪語する。
「マリアージュ・ソルシエールは、そんな私を温める卵の巣!私は、右代宮真里亞!!神と共にある真里亞!!」
自らのアイデンティティで苦しんでいた少女は、聖書に自分の正当性を見出し、無限だった原初の魔女の宇宙に高温のエネルギー体を生み出す。無限の魔女と出会い、やがてそれはビッグバンを起こし、魔法体系が生まれた。
1980~1984年 六軒島
六軒島ベアト 真里亞
ベアトと出会う前からオカルト知識に明るかった真里亞は、魔法が使えずとも自らが魔女であると自覚を持っていた。そんな彼女の元に、魔女は唐突に訪れる。
楼座から外で遊ぶように言いつけられ薔薇庭園の東屋でミルクティーを飲んでいると、いつの間にか目の前にベアトリーチェの姿があった。(真里亞は自分が「そなた」と呼ばれたことが無いことから自分の知らない誰かだと認識した)
彼女は突然の出会いに戸惑いつつ、ずっと会いたいと望んでいた魔女に会えて喜ぶ。
カケラ世界ウィル マリア
知識だけならば自分の方が勝っていた。しかし魔法体系には色々あると語る真里亞。
六軒島ベアト 真里亞
ベアトは真里亞にカップの魔法を見せる。真里亞は魔法にて生み出されたキャラメルを手に、魔法を使いたいと懇願する。こうして二人は友達になる。
カケラ世界ウィル マリア
魔女に会ったことを六軒島の晩餐上で嬉々として話す彼女に、隣の席の楼座は軽く戒める。
「隣の席…?序列上、お前の席は楼座と隣り合わないはずだ。」
「親族会議じゃないもん。……それが何?」
ウィルは何でもないと言い、続きを促す。
ベアトは体が希薄な存在なため、源次、紗音、嘉音、熊沢、南條以外には視えない。彼らはベアトをもう一人の島の主としてごく自然に扱ったという。

ウィルは考える。
ベアトリーチェはいずれ全てのニンゲンの前に姿を現すつもりだった。つまりベアトのゲームの勝利条件の一つは、全員に魔女を認めさせること。反魔法力が一番強かった戦人がゴールであったようだ。もしくは自分を一番認められないニンゲンだろうと思っていたのかもしれない。
宇宙は、二人以上いなければ成り立ち得ない。宇宙をベアトリーチェに置き換え考えると、一人目が生み出した(まだ妄想にすぎない)ベアトを誰かに育んでもらう為、生み出した人物は二人目を欲する。その二人目が真里亞。純粋すぎる彼女に魔女を認めさせ、卵を孵す。その際六軒島の魔女のキャラクターを卵の中で熟成させ、姉ベアトが誕生する。そしてこの時点では戦人の恋心は結びついてないが、その魔女こそが1986年のベアトリーチェの基ではないか。
肉体を持たないベアトリーチェはビーチェや九羽ベアトとは明らかに違う。それを“殺す”とは?
1986年 六軒島
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條 熊沢? 郷田?
次はマリアージュ・ソルシエールについて聞きたいというと、真里亞は一方的に話を切り上げる。今度は別の話を聞けば良いらしい。ゲームマスタ-に真里亞を動かされたウィルは、次は魔女を認めていない者に話を聞く。
  • BGM: le4-octobre(殺されたことを暴くのが葬儀?)/ひだまり(真里亞とベアトリーチェ)/l&d-circulation(マリアの世界)/なまえのないうた_ver.2007(宇宙を生み出した原初の魔女●)/ballade-continuer(出会いは唐突に)/far(一粒のキャンディー)/ひだまり(魔女達の語らい)/lie-alaia(ベアトとマリアージュ・ソルシエール●)/l&d-circulation(真里亞が魔女に望む一番の願い)

[編集]貴賓室の怪談


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條 熊沢? 郷田?
譲治は一応真里亞の前では魔女を認めていた。同じように、使用人達も金蔵の影響でベアトリーチェを信じてはいただろう。しかし根で信じているわけではない。全員に認められない真実は虚構でしかない。ベアトリーチェは認められなければニンゲン以下。即ち家具。彼らは愛の資格を求めて満たされようとするが、それは彼女も同じなのか…?
人の心は虚ろに出来ないと呟き、ウィルは島の住人である朱志香に話を聞く。
カケラ世界ウィル 朱志香
寝惚けていたのだろうと前置きする朱志香。ベアトリーチェなど怪談以下でも以上でもないと彼女は思っていた。
1984~1985年 六軒島
食堂蔵臼 夏妃 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 真里亞
ある親族会議の昼間。(金蔵は既に姿を見せず、楼座と霧江、縁寿は席を外していた)ランチの席上で、朱志香はついベアトリーチェを否定するような発言をしてしまう。もちろん真里亞は憤慨する。
カケラ世界ウィル 朱志香
真里亞は縁寿を抜かせば最年少。新しいことを覚えてもそれは誰でも知っているようなことばかり。だから(第一のゲームで語られた)他人とは違った人格、そして誰も知らないような知識を身につけるために“もう一人の自分”を彼女は作った。朱志香も深窓の令嬢に憧れて、病弱を装うため咳を繰り返すと癖になったと暴露する。
六軒島朱志香 紗音 熊沢 郷田
その後ギクシャクしたまま会議は終わり、真里亞は気にも止めていない様子で帰っていった。朱志香はベアトリーチェなんている訳がないと思い、熊沢や郷田、紗音にベアトリーチェにまつわる怪談を聞かせてもらう。あまり語りたい様子でない彼等だが、その話の中に“貴賓室に午前二時には入ってはいけない”というものがあった。ベアトリーチェが訪れるかららしいが、朱志香はそんなモノいないと啖呵を切ってマスターキーを借りる。
カケラ世界ウィル 朱志香
彼女にとって気味が悪いのはベアトリーチェではなく、そういった類を異口同音に話す彼らの方。その日は実に悪天候だったらしい。
貴賓室朱志香 ?
冷静になって考えると馬鹿らしいことをしたと思った朱志香だが、鍵を返すのもと思い、プライドで貴賓室に向かう。冷え切ったドアノブを捻り、電灯を点けて恐る恐る中に入る。貴賓室の硬い雰囲気の中に、一体のフランス人形が置かれていた。黄金の髪に黒いドレス。その御前にはお菓子があり、まるでお供え物の様だった。
突如、電話が鳴り響く。朱志香は悪戯だろうと受話器を取ると、何故か真里亞の声が。
『うー!ベアトリーチェ、こんにちは…!この間は、楽しいお歌を聞かせてくれて、ありがとう。だから真里亞も習った新しいお歌を歌うね!』
真里亞は童謡を歌うが、朱志香の言葉に何も反応をしない。(第一のゲームの歌はこのテープの一部?)その時、明かりも声も消え、暗闇に包まれる。

朱志香は、子供がベッドから這い上がって気持ち悪く笑いながら出て行くような音を今、そこで聞く。しかもベッドサイドにあったあの人形がどこにもなくなっていた……。
カケラ世界ウィル 朱志香
悪戯だった。そう考えるのが現実的だが、それにしては大掛かりが過ぎる。ベアトリーチェの祟りより、ニンゲンがわざわざそんな手間をかけるほうが彼女にとって余程気味が悪かっただろう。朱志香は、あれは臆病な自分の勘違いということにしてその出来事を忘れようとした。
1986年 六軒島
礼拝堂控え室ウィル 蔵臼 夏妃 理御 朱志香 絵羽 秀吉 譲治 留弗夫 霧江 楼座 真里亞 南條 熊沢? 郷田?
「…おしまい。私に話るのは、この程度の話だけだぜ。」
「充分だ。それより縁寿は腹痛で空席だったな。それはお前の隣の席だな?」
「そうだぜ。右の席だよ。
……ん…おかしいな……どうして右…。」
「無理に考えるな、頭痛にならァ。」
親兄弟達と会話を終えた理御は収穫はどうかと聞く。その後ウィルは理御と話す中で、六軒島の相違点を見つける。
理御はこの島で生まれ育った。その“体験”によると、魔女の碑文は無い。そもそも六軒島に魔女は存在していない。森には狼がいると脅され、ベアトリーチェは金蔵の恩人として肖像画だけがある。
「食堂で、お前の右には誰が座ってる?」
「私の向かいは妹の朱志香。その次の序列は絵羽叔母さんの息子になります。だから譲治兄さんですけれど…それが何か?」
  • BGM: le4-octobre(右代宮朱志香)/白い影(朱志香の世界)/witch_in_gold(cembalo)(真里亞について話すウィルと朱志香)/Minute_darkness(意地になる朱志香)/誘い(貴賓室へ)/隣死(自宅への怯え)/誘い(風と雨と雷)/永遠の鎖(暗闇への誘い)/誘い(ベアトリーチェの人形)/Happy_Maria!(Instrumental)(電話越し)/Minute_darkness(悪戯より祟りの方がマシ?)/le4-octobre(魔女としてのベアトを知らない理御)

[編集]こいつが、犯人だ


場所登場キャラ(オレンジ色)と主な内容
アイキャッチ(レースのエフェクト)前半終了。後半・劇の始まりへ。
礼拝堂ウィル 理御
全ての聞き込みを終えた二人。ウィルは理御に説明し始める。
まずはベアトリーチェについて。
金蔵が関わった二人のベアトでなく、殺されたのは1986年の、朱志香達の怪談すら含む概念上のベアトリーチェ。元々あった怪談や金蔵が繰り返す愛人に付属し、そしてとうとう真里亞の悲しい境遇に同情して自らがベアトリーチェと名乗り現れた者(仮にXとする)が現れる。Xからは姉ベアトが人格(役?)として誕生する。悪食島の亡霊と使用人達の間の怪談が融合したものだ。
魔女同盟が、生み出した者ともう一人に認められることで幻想を育む関係だったように、姉ベアトもXに生み出され、真里亞に認められて育まれた。
真里亞の中では、演じた人物(魔女ごっこに付き合ったX)と、役(ベアトリーチェ)は別人。幻想である役は演じた本人Xにしか殺せない。
(まとめはこちら
しかし閉ざされた礼拝堂には生きた猫と死んだ猫が二匹存在すると言うウィル。犯人は二人いる。Xと、そもそもベアトを生ませもしない、概念を壊せる人物。

「では、お尋ねしましょう。ベアトリーチェ殺人事件。犯人は誰です?。」
「まず最初の一人。死んだ猫。お前だ。」
「は、……ぁ……?」
言っていることが理解できない理御にウィルは続ける。
1986年の魔女ベアトリーチェを語る人間は皆、理御のいない世界を語っている。朱志香の回想や、真里亞の席順にも理御はいない。
理御の世界では、魔女の怪談が存在しない。
理御にとってベアトリーチェは、金蔵の愛人・恩人であって化けて出る亡霊ではない。
金蔵は蔵臼を飛ばして当主を継承したがっているほど理御を可愛がっていた。
朱志香は理御と一つ違いの19歳である。

以上から推測される説。理御の存在はベアトを殺している。逆説的にはベアトは理御がいないなら生きられる。この二人は表裏一体という前提で、ウィルは、理御は19年前の子供・九羽ベアトと金蔵の子供ではないかという仮説を立てる。
メタ・礼拝堂ベルン ウィル 理御 犯人?
「…お見事。……くすくすくすくす。」
19歳ということから単純に19年前の赤子だと導き出したウィル。魔女ベアトリーチェか、右代宮理御か。分岐点は夏妃が崖から突き落とさず赤子を受け入れるか否かにあると言う。
金蔵における理御の重大さは他の誰よりも強い。それは愛した女性の忘れ形見だからだ。ビーチェと自分の娘があまりにも生き写しだったため、九羽ベアトをビーチェの生まれ変わりだと思った金蔵は、過ちを犯してしまった。金蔵はそれを悔い、その後生まれた理御を今度こそ右代宮の子孫として正しく迎え入れ、夏妃に祝福されれば育つはずだったのだ。奇跡の魔女によると、257万8917分の1の確率で。
理御は異なった世界で自らが事件を起こしたらしいと聞くと、一体魔女の自分は何をしたのかと訊ねる。するとウィルは唐突に、理御の性別を問う。
「第五のゲームでは男ということになっている。しかし数多のゲームでは、女だと考えられている。右代宮戦人の第六のゲームでは、性別を違えつつも確定しない二人組の悪魔が登場し、それを暗示した。厳密には一番最初のゲームからだな。お前の性別は、ゲームの外側の隠れた謎の一つだ。」
性別を問われるのがコンプレックスだったらしく、沈黙の後、相棒としての性別がどちらでもいいなら聞かないで下さいと言い、ベルンが差し出した今までの棋譜に触れる。下位の駒は平行世界を無理やり理解させられると頭が混乱する。理御はしばらく意識を失うのだった。ウィルは黄金の魔女にもこんな平凡な人生が送れるとはと呟く。ベルンにとっては笑い話だったが。
カケラを寄せ合わせたこの世界に奇跡の魔女が、絶対的な確率で死ぬ猫を連れて来た。しかし理御は蓋を開けば消える猫。もう一方の犯人・生きている猫は、第四のゲームでも推理は可能。ましてやそれ以降のゲームは全てヒントだったとウィルは言う。

礼拝堂に小さな足跡が響き、ウィルに招かれたその人物は会釈をする。動機を当てられただけで降参するのかとベルンは訊ねるが、動機を気付いてもらえたことが望みだろうとウィルは言う。戦人は真実に至るのが一歩遅かった。だからベアトを弔えず、この葬儀に来ることは無い。
そして、探偵は宣言する。
「こいつが、犯人だ。」
  • BGM: 7-weights(1986年のベアトリーチェとは)/lie-alaia(一人目の犯人は、理御?)/l&d-circulation(19年前の真相)/fall(もう一人の犯人は、)